自分を理解するために、最低「朝夜5分」の時間を
――働くママの多くは、日々のタスクに追われて自己理解を深めるための時間を取れていないのが実態だと思います。尾石さんはそうした時間を確保するためにどのような工夫をしていますか?私は毎日20時にアラームを設定して、自分自身を見つめる時間を確保するようにしています。5分だけ時間を使って、日記アプリにその日したことを書き留めているんです。
仕事や家事などのほかに「夫とけんかした」「こう言われたのが嫌だった」というささいなことまで書き出しています。この時点ではそれについてどう思ったかは書かず、あくまでしたことだけを書き出すだけでOK。
そして翌日の朝、仕事を始める前に「前日のことで1番記憶に残っていること」について5分くらいで掘り下げるという作業をしています。
掘り下げるためのツールはなんでもいいと思いますが、私はパソコンを開くと仕事モードになってしまうので、あえてアナログなノートに書きつづっています。
具体的には、嫌なことならなぜ嫌だったのか、いいと思ったものがあった場合は、なぜいいと思ったのかを掘り下げて書いています。
これを毎日やっていると、自分が考えていることの傾向が見えてくるんです。最近は子どものことばかり考えているとか、この時期はリモートワークのことばかり考えているなとか(笑)。つまり、その時の自分自身の精神状態が見えてくるんですよね。
人間はモチベーションだけでは続きませんから、こうやって自己理解を深める習慣と時間を作ることは、大人になっても必要だと思います。
「時間の分割」と「やらないことリスト」でタスクをスリム化
――最後に、尾石さんのSNSでもたびたび話題になっている「セルフブラック化」について聞かせてください。時間が空けばすぐに仕事や家庭の用事で埋めてしまい、なかなか生活の中にスキマをつくれないというママは少なくないと思います。ママたちがセルフブラック状態から抜け出すために必要な考え方は何でしょうか。自分も含めてですが、セルフブラック化しているママは多いですよね。原因は主に3つあると思います。
1つ目は「もしも」に備え過ぎてしまうこと。
子どもに関するトラブルや発熱など、不測のことがいつ起こるか分からないため、今できることはとにかく先にやっておこうとしてしまい、予定を詰め込み過ぎてしまう人は要注意です。
2つ目はとにかく短期間で成果を出さなければと思い過ぎてしまうこと。
時間がないのだから、ここまでにこれだけやらなきゃ! と思い過ぎてしまうと日々の生活がセルフブラック化しやすいと思います。
そして最後の3つ目として、休むことに罪悪感を感じてしまうということ。
毎日忙しい日々を過ごしているママは、スキマ時間ができてゆっくりすることに対して罪悪感を感じたり、もったいないと感じてしまったりすることが多いみたいです。ご飯を食べる時間も惜しくて、自分の食事は立ったまま済ませてしまうという方はまさにこれですね。
私はこうした状況から抜け出すために、「時間を箱型に区切る」という考え方をしてみました。午前はアウトプット系の仕事、午後はインプット系の仕事。定時を過ぎたら仕事が途中でもいったん切り上げる、など……。
そのほかにも、午前はなるべく会議を入れないようにする、なども効果的です。時間がある限りどんどん会議を入れてしまうと、自分のタスクがいつまでたっても片付かないですから、可能な限り時間の使い方を自分で決める勇気をもつことが重要だと思います。
あとは、「やらないことリスト」を作って自分の時間を守っています。
私の場合は、領収書の整理はやりたくないから税理士さんに全てお任せする、現在自営業で通販サイトを運営しているのですが、そのQ&Aページは問い合わせフォームに来た内容をAIに読み込ませて整理する……とか。
やりたくないことを頑張るのも大事ですが、プロの手やAIに頼りながら効率的に進めていくことも大事だと思います。年齢を重ねるごとに全てのタスクに「全集中」する体力は減っていくわけですから、使えるリソースはどんどん使っていきましょう。
持続可能な働き方を獲得するために、まずは「時間を箱型に区切る」こと、そして「やりたくないことリスト」を作ることを始めてみてはどうでしょうか。 尾石晴 プロフィール
この記事の執筆者:大塚 ようこ
子ども向け雑誌や教育専門誌の編集、ベビー用品メーカーでの広報を経てフリーランス編集・ライターに。子育てや教育のトレンド、夫婦問題、ジェンダーなどを中心に幅広いテーマで取材・執筆を行っている。



