しかし、ここ最近、大企業を含めた多くの会社で「出社回帰」という言葉が取り沙汰されるようになっています。
働き方にとどまらず、生き方にすら影響を及ぼす「出社回帰」の機運に、働くお父さん・お母さんはどう対応すればいいのでしょうか。
外資系メーカーに16年間勤務し、子持ちの管理職としても活躍。現在はVoicy「学びの引き出しはるラジオ」で、働く人や子育て中の人の悩みに寄り添い、具体的な解決策を提案しているポスパム代表の尾石晴さんに、時代の変化の捉え方や、私たちにできる「対応戦略」を伺いました。
出社回帰が私たちにもたらす変化
――今年に入って、LINEヤフーがフルリモートを原則廃止するなど「出社回帰」の流れが目立つようになってきました。こうした動きは私たちの生活にどのような影響を及ぼすと考えられますか?コロナ禍を経て、私たちにはさまざまな働き方の選択肢が提示され、以前に比べて家事や育児、介護などと仕事の両立ができるようになりました。
しかし、最近の出社回帰の機運によって再び生活のバランスが崩れてしまう人は少なくないと思います。ここ数年得られていた「自分の時間」が急激に失われてしまう恐れが出てきたということです。
例えば、子育て中のご家庭であれば、これまでお子さんの保育園の送迎に使えていた時間が、ご自身の通勤時間になってしまうということですから。
また、昼休みに銀行や市役所に行く、仕事の合間に荷物を受け取るなどの日々の些細な、しかし欠かせない作業をする時間も自然と失われてしまう恐れもあるでしょう。
このような「日々を円滑に回すための時間」が削られると、仕事か家庭かの選択を迫られるケースが増え、その多くは女性に影響しやすいのではないかと思います。
仕事と家庭はなんとか両立できても、例えば「このプロジェクトへの参加は見送ろう」「今、管理職に昇進するのは厳しいかも……」という選択をせざるを得なくなる可能性もありますよね。
女性が再び働き方の選択を迫られる可能性も
――働いている本人の生き方への影響も大きいですが、その家族の生活にも少なからず影響は出そうですね。まさにその通りだと思います。例えば、近年不登校の児童生徒の数が増加していますが、リモートワークだとお子さんが不登校傾向にあっても家にいてあげられますよね。それがなくなるのは親子双方に影響が大きいのではないかと思います。
また、不登校ではなくても、親が家にいるというだけで「いつでも帰れる」という安心感をもって学校に行けていたお子さんもいるかもしれません。そういったお子さんへの心理的負担はあるかもしれないですね。
――先ほど少し触れられましたが、女性の家庭内での負担がコロナ禍以前の割合に戻ってしまうような予感もします。
リモートワークが浸透したおかげで、男性の家庭内進出、つまり夫婦間での家事の分担が進んだというご家庭も多いのではないでしょうか。
出社回帰は性別関係なく影響を及ぼすものですから、この5年間は夫がこなしてくれていた家事を、結局妻側が巻き取らないといけないという事態も起こるかもしれませんよね。
このタイミングで、夫婦の時間の使い方を改めて話し合う必要も出てくるかもしれません。
出社日が増えたことにより、例えば平日は朝1時間、夜3時間しか家事育児ができないのであれば、「わが家はその中で何を優先するのか」を夫婦で話し合い、共通認識を持っておくといいのかなと思います。



