出社回帰にどう立ち向かう? イヤイヤ出社に終止符! ムダな通勤を逆手に取る「戦略的」仕事術

コロナ禍から約5年半を経て高まる「出社回帰」の波。働く子育て世代がワークライフバランスの崩壊を防ぎ、キャリアを維持するには? 尾石晴さんに、時間を戦略的に活用し、出社をチャンスに変える具体的な対応戦略を聞きました。

出社時間こそキャリア形成のためのチャンスの時間!

――出社回帰により不安を抱えている人は男女問わず多いと思いますが、そんな中でも、キャリアを維持していくにはどのような工夫、もしくは考え方が必要だと思いますか。

キャリア形成という観点からすると、私は出社回帰というのは必ずしも悪い部分ばかりではないと思います。やはりリアルでコミュニケーションが取れるというのはその後の働き方や自分自身の成長に大きな影響を与えますから。

例えば、自分が今後どんなふうに仕事をしていきたいかという話は、チャットよりも対話の方が上司や先輩に伝わりやすいですし、雑談の中で新たなビジネスが見えてくることもあると思います。テキストコミュニケーションだけでは雑談自体がなかなか生まれないですよね。

せっかく出社するなら、自分のキャリアを築くために戦略的に会社にいる時間を活用しようと考えた方がいいのではないかなと思います。

――出社の時間を自分にとってメリットとなるように活用していくということですね。今後しばらくは進んでいくと思われる出社回帰の機運に対して、企業側と雇用される側、それぞれにどのような変革や判断が求められるでしょうか。

近年は働く環境や働き方を条件に入れて就職活動をする若手が多いですから、入社してから就労条件に大きな変化があることは、会社と従業員双方のマイナスになりかねません。

そこで、今後も持続可能な働き方を獲得するためにも、社会全体で改めて働き方の選択について考えなければならないと思います。

これは会社側に求めることではありますが、雇用形態を『ジョブ型(仕事のスキルや成果で評価する雇用)』と『メンバー型(企業内での長期的なキャリア形成を前提とした雇用)』の2タイプに、今後さらに明確に分けていく必要があるのではないかと感じています。

日本はもともとメンバー型の雇用が主流でしたが、近年は働き方の多様性を求める中で少しずつジョブ型に移行しつつある企業も増えています。しかし、そのような転換をした企業までもが、ここに来て再び出社を強要するのはかなりメンバー型の考え方で矛盾を感じます。

事実、私は今大学院に通っているのですが、会社選びの条件に「リモートワークができるかどうか」を入れている学生はとても多いです。しかしその一方で、在宅での仕事は嫌だという学生もいるんですよね。

入社時点で、双方で働き方や今後のキャリア形成についてすれ違いがないようにするのが重要です。従業員一人ひとりがどのように自分のキャリアを描いているか、またどんな希望があるかということをしっかり共通理解して、希望に応じて選択できるようにするのが理想だと思います。

せっかく出社するなら、その時間をうまく使う

1つの会社で長く働きたいと思っていても、女性は出産というライフイベントがあるとどうしてもキャリアが止まってしまう期間があります。

そこを踏まえて、メンバー型の雇用だとしても「20代、40代半ば以降は全力で働ける。しかし30代はペースダウンしたい」などの希望が通るようにするなどの措置も考えられますよね。そうでなければ、出産以降の女性はマミートラック(キャリアの主流から外れること)を走らざるを得なくなるという従来の形は何も変わりません。

こうした制度の改革を求めていくためにも、雇用されている側は、先ほども言ったように出社日を戦略的に活用するという考え方に転換することが大事だと思います。「出社させられている」のではなく、「せっかく出社するならその時間をどううまく使うか」と考えていくということです。

出社時間を活用して社内の中で上司や同僚とよい関係を作っておくことが、将来自分に予期せぬイベント(介護、遠方への転勤など)が起きたときに、会社に残ってほしいと思われる人材になれるかどうかの分岐点となると思います。
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尾石晴さん プロフィール
尾石晴さん
Voicyの人気パーソナリティー、尾石晴さん
株式会社ポスパム代表。大学卒業後、外資系メーカーに16年勤務。転勤5回、管理職の経験あり。2020年に退職し、独立。2年間のサバティカルタイムを経て、現在は大学院博士課程(感性学)に在籍中。2013年、2016年生まれの男児2人の母。著書に『40歳の壁を越える人生戦略』(ディスカヴァー)ほか多数。最新刊は『「やりたいこと」が全部できる! 自分の時間: 思いきってやめる、新しく始める』(三笠書房)。

この記事の執筆者:大塚 ようこ
子ども向け雑誌や教育専門誌の編集、ベビー用品メーカーでの広報を経てフリーランス編集・ライターに。子育てや教育のトレンド、夫婦問題、ジェンダーなどを中心に幅広いテーマで取材・執筆を行っている。 
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