「小1の壁」で気づいた「40歳の壁」の正体とは? 勤続15年ワーママが直面したキャリア危機

30代後半から50代にかけて陥りやすい「ミッドライフクライシス」。筆者は「小1の壁」に直面した際にこの壁の存在を察知しました。2年間の試行錯誤を通じて得た、この“壁”との向き合い方をお伝えします。

人生の中盤に差し掛かると、「自分の人生、これでいいのかな……」と迷い始める
「40歳の壁」は「小1の壁」とともにやってくる? ワーママのキャリア停滞からの脱出法とは(画像出典:PIXTA)
「ミッドライフクライシス」という言葉をご存知ですか? 30代後半から50代にかけて陥りやすい、中年期特有の心理的危機のことです。人生の中盤に差し掛かると、「自分の人生、これでいいのかな……」と迷い始めるのです。

心理学者エリクソンの発達理論によると、人は40歳頃まで新しい感覚や知識を「得る」ことで成長しますが、それ以降は次世代に「渡す」発達へと潮目が変わります。この発達の流れの変化に戸惑うことこそが「40歳の壁」の正体なのです。

では、実際にこの壁に直面したとき、どう向き合えばよいのでしょうか。『「40歳の壁」を越える人生戦略』(尾石晴 著)から一部抜粋し、そのヒントをご紹介します。

「小1の壁」の実体

2019年、私は新卒で入社した外資系企業で勤続15年目、ワーキングマザー歴6年目になっていました。

当時3歳になった次男はオムツがほぼ外れ、長男も小学校に上がりました。「そろそろ仕事にギアを入れるタイミングかも」と思っていた矢先にドーンと来たのが、いわゆる「小1の壁」。

「小1の壁」とは、「子どもが小学校に上がると保育園時代に比べて、仕事と子育ての両立が困難になること」を指します。

保育園時代と違い、延長保育や土曜保育はなくなり、夏休みなど長期休みのフォローも必要になる。また、小1までには多くの企業の時短勤務が終了。かといって、子どもが小学生になった途端に何でもできるようになるわけではないため、心配は尽きない……。

共働き家庭の多くは、この「小1の壁」にぶつかります。まさに、当時の私もバッチリ直面していました。

わが家は、平日は私が育児を担当、いわゆるワンオペ育児でした。朝7時半に家を出て、19時前に帰宅。21時に寝るまで2時間しかないものの、2人とも保育園に行っていた頃はどうにかやりくりできていました。

なぜなら、やることが全部「お世話」だから! 「ごはん、風呂、寝る」のお世話だけで、どうにか母子の生活は回っていたのです(お世話の合間に洗濯、掃除、調理などの家事をする)。

「お世話」の強みは、外注が可能だということ。ベビーシッターさんや祖父母など、親以外でも代わりにできます。しかし、長男が小1になって「学業」が始まると、そうはいかなくなってきました。

・毎日の学校の宿題確認(親のサイン込み)
・習い事の送迎
・学校での出来事を確認する(本人から聞き取り)
・連絡帳で明日の準備物を用意する(工作の材料など)
・先生とのやり取りを連絡帳で確認する
・行事に必要なものがないかチェックする
・息子の話を聞いてやる(重要)


「お世話」に加えて「学業+心のフォロー」にも神経を使うようになり、精神疲労が半端ない。保育園時代とは比べものにならないくらいです。

しかも、「学業+心のフォロー」は毎日定点観察してくれる大人(多くは親)が必要。同じ人が継続的に見ていたほうが把握しやすいし、子どもも自分の話は「親」に聞いてほしいんですよね。

「学業+心のフォロー」の任務が重くのしかかり、まるで「帰ってからも仕事が待っているような気持ち」になってしまう。加えて次男(2歳児クラスの保育園児)もいる……。

第一子出産後より私が年を取って体力が低下していた(32歳→38歳)のもありましたが、年々楽になると思っていた育児が楽にならない。第一子出産後の「ワーママ第一の暗黒時代」(拙著『やめる時間術 24時間を自由に使えないすべての人へ』を参照ください)に次ぐ「ワーママ第二の暗黒時代」の到来でした。

ワーママ的働き方の岐路に立つ

「小1の壁」の前で右往左往していたら、実はその後ろにもう1つの壁があることに気づきました。そう、「40歳の壁」です。

・子どもの放課後や長期休みの預け先、平日の子どものフォロー時間不足など、「小1の壁」でぶち当たっている問題の多くは、私の働き方が固定化されているから起きているのではないか。

・「乗り越えたい!」とポジティブな気持ちになれないのは、私の内側からのなんらかのサインなのではないか。

・たまたま「小1の壁」で露見しただけで、そもそも「40歳の壁」として働き方を考える必要に迫られているのではないか。


職業人生が80歳まであるとしたら、残り40年は「どう働きたいのか?」、そろそろ考えなければいけない時期が来ていると感じました。

当時勤めていた会社は、いろいろな部署に異動ができて、飽き性の私でもキャリア形成を楽しむことができました。しかし、子どもを産んでからは、保育園などの問題で転勤を伴う異動がかなわないことが多く、キャリアの停滞にモヤモヤ……。

このままの働き方では、今後10年以上、育児とキャリアのバランスについて悩むことになります。

解決するためには、働き方を変えるのか? 働き方を変えずにどうにかやり過ごしていくのか? パートナー(夫)が、私の負担を担うという手はないのか?

何度か夫婦で話し合ったのですが、夫の職業におけるシフトダウンは退職しかありません。彼は「君が仕事をするのも辞めるのも好きにしていいけど、自分は職場も職業も変えるのは厳しい」と言い、議論は平行線のまま。

必然的に迷える私が「選択」を迫られました(ここは賛否両論ありそうですが、わが家は夫の辞めない選択を尊重しました)。

そうなると、私は自分を変えるか、自分を取り巻く仕組みを変えるしかありません。

1. 勤務時間が短い職業に転職する。
2. 仕事を辞めてしばらく家庭に入る。
3. 自分で仕事を始めてみる。


どれがピンと来るのか?

現状の仕事に不満はなくても、キャリア停滞のモヤモヤが改善しないことは明らかです。このまま働き続けても、問題の先送りをするだけ。半年後も同じことを言っているのが目に見えていました。

なぜなら、前回の「ワーママ第一の暗黒時代(第一子育休直後)」と違って、「ワーママ第二の暗黒時代(第二子育休直後)」は、「40歳の壁」がすぐ後ろに迫っている気配があり、「今をとりあえず改善、もしくは効率化すれば解決する」という未来が見えなかったからです。

子どもの「お世話」だけなら、外注や効率化でどうにかなってきたのですが、

・子どもの「学業+心のフォロー」(小1の壁)
・40歳までの自分のキャリア構築(40歳の壁)


この2つを視野に入れると、その場しのぎの対応では解決しない。解決してくれるのは「私自身の選択、決断、覚悟」、この3つだけだと思いました。

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40歳目前「安定を手放すのが怖い」。それでもワーママが退職を決められた理由
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尾石晴 プロフィール
株式会社ポスパム代表。大学卒業後、外資系メーカーに16年勤務。転勤5回、管理職の経験あり。2020年に退職し、独立。2年間のサバティカルタイムを経て、現在は大学院博士課程(感性学)に在籍中。2013年、2016年生まれの男児2人の母。最新刊は『「40歳の壁」を越える人生戦略』(ディスカヴァー)。
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