
人生100年時代、誰もが「40歳の壁」にぶつかり、同時に「第二の職業人生」という課題が立ちはだかります。1930年にケインズが予言した「人の仕事がなくなる時代」は既に到来し、多くの人が仕事のやりがいや社会的意義を見失いかけています。
今回は、『「40歳の壁」を越える人生戦略』(尾石晴 著)より一部抜粋し、人生の後半戦をどうデザインするか、アラフォー世代が直面するこの課題をひもときます。
第二の職業人生をどう歩むか
アメリカの44歳から70歳までの3100万人以上が、個人的なやりがい、継続的な収入、社会的な影響力を兼ね備えた第二のキャリアを歩みたいと考えているそうです(『LIFE DESIGN スタンフォード式 最高の人生設計』ビル・バーネット、デイヴ・エヴァンス著、千葉敏生訳、早川書房刊より)。人生100年時代の今は、誰もが必ず「40歳の壁」(もしくは壁もどき)にぶつかります。そして、その「40歳の壁」と向かい合うとき、「第二の職業人生を考える」という課題も一緒についてきます。
なぜなら、「残りの人生」を考えたとき、24時間から睡眠や食事などの生活時間を除くと、仕事の時間はもっとも長いものだからです。
40歳以降の自分がどうありたいかを考えるとき、職業の影響は大きいですよね。また、職業的自立は経済的自立につながるため、重要なファクターでもあります。
定年まで、この仕事で食べていけるのか? 定年を迎えた後はどうするのか? 同じ職種、職能だけでは限界や飽きも感じるし、定年後のためにせっせと貯金をしたり、保険に入ったりして、それらを切り崩しながら乗り切るのも心もとない。
これから来る自分の老いや衰えていく体力・気力と折り合うものでないと継続できないし、やりがいを持ち続けられるのか、働き続けたいと思えるのか、不安は尽きない。それらが今の仕事の延長線上にあるとは、とても思えない……。
アラフォーになって、私も「40歳の壁」を意識するようになり、第二の職業人生までを視野に入れ、自分の人生の「あり方」を考えることが増えていきました。
「40歳の壁」にぶつかるもう1つの理由
ケインズという有名な経済学者がいます。彼は、論文でこんなことを書いています。将来、技術の発展によって、人のほしい物はすべてつくられ、人の仕事がなくなる時代が来る。しかし、社会システムによって、人間は長年仕事をするようにしつけられてきている。そのため、凡人ほど「暇な時間をどう使うか」に困るようになる。
これが書かれたのは、なんと1930年。「え! 現代じゃないの!?」と思いませんでしたか? ケインズがいうところの「人がすることがなくなる時代」がすでに到来しているように感じます。
さらに、ケインズは、この「人がすることがなくなる時代」を「2030年」としていました。皆さんはどう思いますか? 2030年まで待たなくても、もうその予兆を感じませんか?
たとえば、スマホの代表であるiPhoneが発売されたとき、世界中の人がどよめきました。これまでの携帯電話と全然違う! 大きな革命でした。
その後、多くのメーカーがスマホ市場に参入して、毎年さまざまなスマホの新機種発表を繰り返しています。もはや「どこを改良したの?」と思っている人も少なくないのではないでしょうか。
日本の白物家電もそうですね。多くのモノやコトも、0を1にする時代は、ほぼ終わりが来ている。こねくり回して、100を101にすることに労力が使われています。
こういった現象を見るたびに、ケインズ先生(敬意を表して先生)に問われている気分になります。
・あなたは、その仕事にやりがいを感じているか?(入社当時はやりがいのある仕事だったとしても、今は惰性でやっていないか?)
・その仕事は、価値を生み出しているか?(社会的に意義のある仕事なのか? わが社の製品で世の中が良くなるのか? 子どもに誇りを持って説明できる仕事なのか?)
・未来の自分のためになる仕事なのか?(社内調整スキルは抜群だけど、専門職でもない。会社にいる分には問題ないけど……)
ちなみに、ケインズ先生は、「最終的に人は週15時間労働になる」「1つの仕事をみんなで分け合う時代が来る」とも述べています。
現在、多くの人が「40歳の壁」を感じてる理由は、「人生100年時代」だけではありません。もう1つの理由は、私たちの働き方に限界が来ているから、ともいえます。