世界を知れば日本が見える 第71回

【解説】参政党躍進に“ロシア系bot”疑惑、証拠なく“自民党の情報操作”との見方も

参院選を前に、SNSで「ロシア系ボット(bot)」が与党批判を拡散しているとの指摘が浮上。しかし、参政党とロシアの関係を示す確たる証拠はない。むしろ、この疑惑自体が「自民党の情報操作では」との見方もあり、事の発端から経緯を解説する。

与党が大敗しても「“ロシア工作”で自民党が負けた」は誤り

このように見ていくと、SNS上で自民党や公明党、自民党政治家を偽情報なども駆使しながら否定的なポストを繰り返すアカウントが、ロシアとどのように関係しているのかはまだ判然としない。

ただ、一定の意見を拡散させているボットが存在しているのは事実であり、冒頭で紹介したオンラインサイト「note」の投稿記事のように、自民党叩きのSNSポストがフェイクニュースをばらまいているのは間違いない。

また、いかにもロシア関連と思われるアカウントだけでなく、参政党を支持したり、フェイクニュースを無意識に繰り返し拡散させたりしている日本人アカウントは、有名人のものも含めて少なくないことも事実だ。
 
ひとつ明らかなのは、もし今回、与党側が参院選で大敗をしたとしても、それはこのロシア系ボットとされるアカウントなどが戦犯なのではない、ということだ。自民党の議員がこぞって、「ボット工作はあり得る」という発言をし始めているところを見ると、敗北の責任をロシアの工作だった、と言い出す可能性は否めない。あくまで、国民からの不支持を突きつけられたという自覚を持つべきだろう。
 
さもないと、「ロシア工作で自民党が負けた」というよく分からない情報が記録されることになりかねない。今に始まったことではないSNS工作に対して、冷静な調査と対策を粛々としていただきたい。
 
この記事の筆者:山田 敏弘
ジャーナリスト、研究者。講談社、ロイター通信社、ニューズウィーク日本版に勤務後、米マサチューセッツ工科大学(MIT)でフェローを経てフリーに。 国際情勢や社会問題、サイバー安全保障を中心に国内外で取材・執筆を行い、訳書に『黒いワールドカップ』(講談社)など、著書に『ゼロデイ 米中露サイバー戦争が世界を破壊する』(文藝春秋)、『モンスター 暗躍する次のアルカイダ』(中央公論新社)、『ハリウッド検視ファイル トーマス野口の遺言』(新潮社)、『CIAスパイ養成官 キヨ・ヤマダの対日工作』(新潮社)、『サイバー戦争の今』(KKベストセラーズ)、『世界のスパイから喰いモノにされる日本 MI6、CIAの厳秘インテリジェンス』(講談社+α新書)。近著に『プーチンと習近平 独裁者のサイバー戦争』(文春新書)がある。

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