ロシア関与の証拠はまだないが、無関係と断言できる根拠もない
参政党を巡る一連の指摘の中で取り沙汰されているのが、ロシア政府系メディア「スプートニク」の記事が拡散に利用されているという疑惑だ。ロシア寄りの記事が多いスプートニクの情報を、日本のボットとみられるアカウントなどが広めているという。その拡散の重要な役割を担っているのが「Japan News Navi」というWebサイトだと指摘されている。SNS工作を研究している東京大学大学院工学系研究科の鳥海不二夫教授は、Yahoo!ニュースに掲載した記事で、「すぐに『Japan News Navi関連アカウントのフォロワーはロシア系工作Botで参政党と関係が深い』という結論までは導くことはできないことにはご注意ください」とつづり、「ロシア製ボットがJapan News Naviとその関連アカウントを介して対日工作が展開しているという主張を否定する材料は特に見つからなかった」としている。つまり、「ロシア関与の証拠はまだないが、無関係と断言できる根拠もない」という慎重な立場を示している。
ただ、今回の騒動を受けて、関連性が指摘されていた複数のアカウントがすぐに一時凍結されたという事実もある。これらのアカウントは、もともと陰謀論などの偽情報をばらまいていて、コミュニティノートの対象になっているものもあった。そのため、以前からX運営に「報告」されていたと考えるのが自然だ。選挙期間中という状況もあり、今回、政府関係者から改めて報告が入ったことで一時凍結に至ったとみられる。
政治工作、アメリカの事例は?
ちなみに、海外では政治工作を目的とした海外勢力のボットが膨大な数存在しており、今回日本で凍結されたアカウントとは比べものにならない規模だ。そのため、影響力も日本とは大きく異なると考えられる。アメリカのクレムソン大学の調査によると、同国の選挙で政治的影響を狙ったボットの工作キャンペーンの一例では、少なくとも686のアカウントが使われ、一気に13万件以上の投稿を行っていると報告されている。
また2016年のアメリカ大統領選挙以降、特に問題になったロシア系ボットについて、アメリカ政府はFacebookやXなどのプラットフォーム事業者にアカウントの削除などを徹底して求めた経緯がある。そもそもXだけを見ても、アカウント全体の6割ほどはボットだと言われている。そこにロシア政府系や中国政府系が紛れ込んでいるということだ。
さらにアメリカでは法執行機関であるFBI(米連邦捜査局)が動き、“しかるべき捜査”を尽くした末にロシアに絡むアカウントを大量に削除処分した。加えて、ボットファーム(ボット生成の拠点)や不正アカウントに関わるサーバー、ドメインも停止措置が取られている。
つまり、今回の日本のような、選挙直前に突如浮上した「ぼんやりとした疑惑」ではない段階で法執行がなされているのである。
ただそれでも、アメリカでは偽情報が大量に広がっており、ボットや偽情報への対策が日本より大きく進んでいるとは、お世辞にも言いがたい現状だ。



