参議院選挙の目前に控えた7月16日、青木一彦内閣官房副長官は「わが国も影響工作の対象となっている」と定例記者会見で語った。
世界各地で選挙が外国勢力などから影響工作(SNSなどを通じて世論や投票行動に影響を与えようとする活動)を受けているという話は、ここ10年くらいの間で世界的な問題になっている。それが日本でも顕在化しているとすれば、大変なニュースだと言える。
「与党がロシアのSNS工作で悪影響を受け、参政党が躍進」という疑惑
事の発端は、オンラインサイト「note」に掲載されたブログ記事だった。SNSなどで長く使われてきたボット(bot/自律型のプログラム)が、参院選を前にして、野党に有利になるような投稿を自動的に拡散させていると指摘され、大きな話題となった。そのブログ記事によると「政府批判、石破茂、岩屋毅、公明党などへの攻撃が中心」だという。つまり、与党がロシアのSNS工作によって悪影響を受けているらしい。実際に、SNSによる選挙干渉は起きているのか。もし、最近注目を浴びている野党の参政党などの勢いの背景に、外国勢力からの工作があるのだとすれば、それは日本の民主主義に対する脅威であると言える。
証拠なき指摘は“自民党側の情報操作”との見方も
ただ現時点ではその確たる証拠はない。ロシアが工作活動に利用するとされるX上の自動アカウント、いわゆるボットとロシアの工作部隊との関係を裏付ける明確なエビデンスは、日本ではまだ確認されていない。もし、参政党の注目が高まっている背景に「ロシアがいる」という確たる証拠がないままでこの指摘が広がれば、逆にそれ自体が、自民党側による参政党を貶めるための影響工作ということにもなりかねない。さらに、仮にその指摘の拡散に自民党寄りの勢力や資金が関わっていたとすれば、それもまた看過できない影響工作といえる。



