結論から申し上げれば、メッセージ映像がフェイクであるかどうかの真偽は結局ははっきりとはしておらず、「どちらにも取れる」「観客に解釈を委ねている」ものでありつつも、「確実に本物だろう」と感じさせるバランスになっていたと思います。
その上で、本作は「メッセージ映像そのものが本物」だとしても、実際は「現実にあるフェイクニュースの本質を描いている」と思えますし、それを経た劇中の「選択と行動」こそが重要だと思えるのです。
それらの理由を、本編のネタバレありで、5つのポイントに分けて解説しましょう。
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※以下より、2025年版『スーパーマン』の本編の結末を含むネタバレに触れています。
1:「フェイクではない」という根拠はたくさんある
スーパーマンの生みの親である、クリプトン星人の両親が「破損したメッセージ映像」の中で主張していたのは「人間たちを支配しろ」「ハーレムを作って子孫を残せ」といった、スーパーマンに「侵略」を命じるような言葉でした。メッセージ映像を公表したレックス・ルーサーは、テレビで多数の言語学者やコンピューターエンジニアに確認してもらったことを告げていましたし、裏取引をしていたボラビア共和国の大統領が口にした「フェイクとは恐れ入った」という言葉に対して、ルーサーは「フェイクじゃない。スーパーマンに対抗するものがないかと探しに行ったら“棚ぼた”だった」とも返しています。
仲間内で話している時にもそう言っていることから、少なくともレックス自身がメッセージ映像がフェイクではないと思っている(思い込んでいる)のは間違いないでしょう。ほかにも、スーパーマンの仲間であるジャスティス・ギャングの一員であるミスター・テリフィックも「フェイクとは考えられない」と明言していたので、メッセージ映像自体が本物だということは、もはや「確定的」だと思います。
2:「意訳」があるのかもしれないし、本当に映像がフェイクだった可能性もある
ただ、レックスはスーパーマンへのルサンチマン(嫌悪や嫉妬)をはっきりと募らせていますし、序盤の会議では「スーパーマンの悪意が証明できなければ動けない」ことも指摘されていました。ここではあえて伏せておきますが、スーパーマンの敵として立ちはだかる「ウルトラマン」の「正体」を思えば、ルーサーが「スーパーマンを自分の思い通りの存在にしたい」と考えていることは明白です。それらのことから、メッセージ映像でレックスの悪意が込められた「意訳」がされていたり、無意識的にせよ異なるニュアンスで世に公表してしまったという可能性もあると思います。例えば、「支配」が実際は「人間を導く」的な意味だった、ということもあり得るでしょう。
さらに、破損したメッセージ映像を修復したのは、レックスの部下であるエンジニアでした。彼女もまたスーパーマンへの嫌悪を募らせるレックスに同調しており、彼女自身がレックスにも判別できない精巧なフェイク映像を生み出していたという可能性だって、ゼロではないはずです。
また、スーパーマン自身が見ていたのはメッセージ映像の前半部分のみで、その後半の破損した部分を「本当に知らなかった」というのも不自然な話です。誰かが故意に後半部分のメッセージ映像を壊したことも考えられるでしょうし、映像がフェイクかどうかの真偽も含めて、次回作以降にそれらの謎が明かされるのかもしれません。



