4:「移民」のスーパーマンの物語だった
スーパーマンは「移民」のメタファーであると、よく語られています。彼は、かつて住んでいた星の爆発を逃れて地球にやってきた異星人であり、地球人として社会に溶け込もうとする姿も描かれています。さらに、そのコミックの原作者自身がユダヤ系移民なのです。
そこには、現代の「フェイクニュース」を思わせる、真実がゆがめられ、陰謀論に人々が扇動されるという問題もはっきりと表れているのです。
移民の外国人が、根拠のない(あるいは真実をねじ曲げた)デマによって差別され、それに乗じた排外的な価値観が、まるで当然の権利であるかのように広まっている。このような状況が、今まさに日本で現実に起こっていることは、言うまでもありません。
5:スーパーマンは実在しない、だけど……
スーパーマンでも不当な差別の目が向けられる世界では、そのスーパーパワーがあってもどうにもならない、優しさで問題を解決することなどできないのかもしれない……。劇中では、そんな絶望的な空気さえも漂っています。しかし、ネタバレになるので詳細は伏せておきますが、その先にとてもストレートかつ、誠実な「答え」を提示していたことに、筆者は大粒の涙を流してしまいました。
さらに、ガン監督は動画でこう続けています。
確かに、本作は現実にはいない、スーパーヒーローを描くフィクションです。しかし、スーパーマンの優しさと、その優しさがつなぐ希望は、現実の世界にも絶対的にあるものであり、その意志は次の世代にも受け継ぐことができる。それは決して絵空事ではないのだと、心から思えたのです。結局のところ、この映画には切なさがあります。スーパーマンは実在しないからです。私の願いは、この映画を観た子どもたちが15年後、スーパーマンになって世界を救ってくれることです。
おまけ:犬がめっちゃかわいい(重要)
最後に、もう1つ重要なことを語っておきましょう。今回は『スーパーマン』の実写映画で初めて、相棒であるスーパードッグ「クリプト」の姿が描かれており、そのクリプトがめちゃくちゃかわいいのです。 実際にガン監督は保護猫1匹に保護犬2匹を飼っており、劇中のクリプトに関する全ての動き、例えば「足をかむ」といった動作や、その性格までも自身の愛犬の映像を元にしているのだとか。そのクリプトが象徴するように、本作は今日的なテーマを扱う作品ながらも、親しみやすくて、愛らしくて、ユーモアにクスクスと笑える、万人向けのエンターテインメントにもなっています。「犬映画」としても秀逸で、この世界での希望を得られる『スーパーマン』を(前述した通りなるべく早く)劇場でご覧になってほしいです。 この記事の筆者:ヒナタカ プロフィール
All About 映画ガイド。雑食系映画ライターとして「ねとらぼ」「マグミクス」「NiEW(ニュー)」など複数のメディアで執筆中。作品の解説や考察、特定のジャンルのまとめ記事を担当。2022年「All About Red Ball Award」のNEWS部門を受賞。



