ヒナタカの雑食系映画論 第148回

映画『ショウタイムセブン』の阿部寛が「岸辺露伴」に見えた理由。フジ問題と無縁ではない問題提起も

映画『ショウタイムセブン』は阿部寛が「正しくない」人間を演じていることが重要でした。映画およびドラマ『岸辺露伴は動かない』の渡辺一貴が監督・脚本を手掛けたからこその面白さも解説しましょう。(※画像出典:(C)2025「ショウタイムセブン」製作委員会)

ショウタイムセブン
『ショウタイムセブン』2月7日(金) 全国公開 配給:松竹 アスミック・エース (C)2025「ショウタイムセブン」製作委員会 原作:The film “The Terror, Live” written and directed by Kim Byung-woo, and produced and distributed by Lotte CultureWorks Co., Ltd. and Cine2000
2月7日より映画『ショウタイムセブン』が劇場公開中です。2013年の韓国映画『テロ, ライブ』を原作としており、同作は2021年にインドでも『ダマカ:テロ独占生中継』というタイトルでリメイクされています。

本作の魅力はテロの犯人との一触即発の駆け引きが展開するリアルタイム型サスペンスとシンプルに説明できます。98分というタイトな上映時間にギュッと詰め込まれた、ハラハラドキドキを楽しみたい人にうってつけでしょう。

加えて、主演の阿部寛が「正しくない」人物を演じていることや、「日本独自のアレンジが大きい」ことも外せません。さらなる魅力を記していきましょう。  

凄惨なテロ事件を「利用」しようとする主人公

主人公の折本眞之輔は、ニュース番組『ショウタイム7』のメインキャスターを降板させられ、不本意な形でラジオ番組のパーソナリティーを務めています。その生放送中に謎の男から爆破テロ予告が届き、直後に発電所から火の手が上がり、犯人から交渉人に指名された折本。彼はこれを第一線に復帰するチャンスとみて、生放送中の『ショウタイム7』のスタジオに乗り込み、犯人との生通話を強行するのです。
ショウタイムセブン
 (C)2025「ショウタイムセブン」製作委員会
つまり、主人公はニュースキャスターへの復帰を果たすために、凄惨(せいさん)なテロの犯人との交渉を報道として「利用」しているわけです。初めにテロ予告をイタズラだと思った際には(ラジオ放送には乗らないようにしつつ)暴言を吐いていますし、犯人との交渉では真っ当に事件の解決に乗り出していると思える反面、そこには自分本位の言動も垣間見えるのです。

はっきりイヤなやつでありながらも、完全な悪人というわけでもなく、間違いなく一定の正義感を持ち合わせてもいる、どこかで彼の「善性」を信じたくなるのも重要。詳細は伏せておきますが、犯人の事情を汲み取り最善の方法を模索しているように見えますし、この事件を通して過ちに気付いて反省し、重大な決断をする場面もあるのですから。
ショウタイムセブン
 (C)2025「ショウタイムセブン」製作委員会
もちろん主な要素は「どこに爆弾が仕掛けられているか分からない状況における、犯人との命懸けの交渉」なのですが、いい意味で絶対的なヒーローではない、「正しくなさを抱えた人間の物語」としても興味深い内容となっているのです。
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阿部寛が「岸辺露伴」にも見える理由
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