ヒナタカの雑食系映画論 第148回

映画『ショウタイムセブン』の阿部寛が「岸辺露伴」に見えた理由。フジ問題と無縁ではない問題提起も

映画『ショウタイムセブン』は阿部寛が「正しくない」人間を演じていることが重要でした。映画およびドラマ『岸辺露伴は動かない』の渡辺一貴が監督・脚本を手掛けたからこその面白さも解説しましょう。(※画像出典:(C)2025「ショウタイムセブン」製作委員会)

阿部寛が「岸辺露伴」にも見える理由

何より、その主人公役に阿部寛という俳優をキャスティングしている点が「大正解」です。見た目からインパクトとカリスマ性がある人物であり、今回はラジオ番組における阿部寛の「いい声」から聴きほれるのですが、正しくない人間の「高圧的」とも言える怖さや危うさもまた際立っています。「応援してはいけないはずなのに応援したくなる」という、複雑な魅力のある阿部寛には魅了されてしまうはずです

本作の監督・脚本を手掛けたのは、ドラマ『岸辺露伴は動かない』(NHK)および映画『岸辺露伴 ルーヴルへ行く』の渡辺一貴。その『岸辺露伴』シリーズとは「黒」が映える画の美しさや、謎めいた存在との心理的な戦いが共通しています。

思えば『岸辺露伴は動かない』の主人公もまた、「自分のために行動しているが、正義感も持ち合わせている」キャラクターであり、今回の『ショウタイムセブン』の主人公と似ている部分もあります。極端な事を言えば、「阿部寛が岸辺露伴を演じていたらきっとこんな感じなのだろう」と想像もできたのです。

渡辺監督は撮影に際し、緊急通報指令室のみで展開するデンマーク映画『THE GUILTY/ギルティ』を参考にしたそうで、「役者さんとプロットの力で魅せきってしまう部分に影響を受けています」と語っています。確かに極めて限られた舞台だからこそ、主演の阿部寛を筆頭とした役者の力を「信じている演出」が随所にありました。

また、本作の犯人役は「シークレット」であり、竜星涼が告知動画で「ほとんど正解を言っている」ことも話題になりましたが、劇中の「声」から誰なのかを予想してみるのも楽しいでしょう。犯人が終盤に主人公に投げかける言葉は強烈であり、阿部寛と渡り合う彼の演技と存在感にも期待してほしいところです。

渡辺監督の最新作は、5月23日公開の『岸辺露伴は動かない 懺悔室』。邦画初の全編イタリア・ヴェネツィアロケが敢行されており、原作では短編だったエピソードが、どのように長編映画としてアレンジされているかも含めて、大いに期待できます。
次ページ
日本独自のアレンジ、フジテレビ問題にも重なる問いかけも
Lineで送る Facebookでシェア
はてなブックマークに追加

連載バックナンバー

Pick up

注目の連載

  • どうする学校?どうなの保護者?

    「まだ体育館で軟禁されてるの?」役員決めを廃止したPTA、保護者と先生が手にした“穏やかな春”

  • ヒナタカの雑食系映画論

    映画『鬼の花嫁』で永瀬廉が体現する「俺様ではない魅力」とは。『シンデレラ』的物語へのアンチテーゼも

  • 恵比寿始発「鉄道雑学ニュース」

    江ノ電20年ぶり新車、謎の「1人掛け席」の正体は? 観光サービスではなく「混雑地獄」に挑む苦肉の策

  • 海外から眺めてみたら! 不思議大国ジャパン

    「移民」に冷たいのはどっちなのか? スイスの厳格過ぎる学歴選別と、日本の曖昧過ぎる外国人政策