ヒナタカの雑食系映画論 第145回

映画『室町無頼』、MVPはなにわ男子「長尾謙杜」だと思える理由。主人公が実質“3人”いる物語の凄み

1月17日より映画『室町無頼』が劇場公開中。漫画『鬼滅の刃』(集英社)、インド映画『RRR』、アニメ映画『劇場版 忍たま乱太郎 ドクタケ忍者隊最強の軍師』を連想させる要素をまとめつつ、MVPが長尾謙杜である理由も記しましょう。(画像出典:(C) 2016 垣根涼介/新潮社 (C)2025「室町無頼」製作委員会)

室町無頼
『室町無頼』絶賛上映中 原作:垣根涼介『室町無頼』(新潮文庫刊)配給:東映 (C) 2016 垣根涼介/新潮社 (C)2025「室町無頼」製作委員会
『室町無頼(ぶらい)』が1月17日より全国公開されています。原作は直木賞受賞作家である垣根涼介の同名小説であり、日本史上初めて武士階級として一揆を起こした実在の人物・蓮田兵衛(はすだ ひょうえ)を主人公に迎えた時代劇です。

堂々たるエンタメ全開の時代劇に

その内容といえば「”リアル”な風と炎と砂塵が舞う中世の暗黒時代を駆け抜ける、エンタメ全開のアクション巨編!!」という触れ込みが大げさではない超大作! スケール感も半端なものではなく、日本映画および時代劇の1つの到達点を見届けるためにも劇場に駆けつけてほしいです
 

「刀剣等による殺傷流血の描写がみられる」という理由でPG12指定がされていますが、それも必要なものであり、残酷さや暴力からも逃げなかったことも美点と言えるでしょう。作品のさらなる魅力および万人におすすめできる理由を、キャラクターと入江悠監督の作家性から記していきます。

「無頼」の言葉通り「正しいだけじゃない」主人公

タイトルにある「無頼」とは、広辞苑によると「(1)正業につかず、無法な行いをする者。また、その行為」「(2)たよるべきところのないこと」を指す言葉。シンプルに「アウトロー」と表現もできるでしょう。
室町無頼
(C) 2016 垣根涼介/新潮社 (C)2025「室町無頼」製作委員会
メインの物語を俯瞰(ふかん)的に捉えれば、大泉洋演じる主人公の蓮田兵衛は「苦しむ人々のために立ち上がったヒーロー」と言えなくもないのですが、決して「正しい」ことだけをしているわけではなく、「己の腕と才覚だけで混沌の世を泳ぐ自由人」という触れ込み通りの人物として描かれています。
 

具体的には、無用と思えば関所に火をかけたり、役人も平然と斬り殺したりもする始末。一方で、弱り切った人への優しさを感じさせる場面もいくつあり、その根底には確かな人情を感じさせる複雑な主人公像、アウトローもしくは「ダークヒーロー」とさえ言えるキャラクター性が本作の大きな魅力となっているのです。

『鬼滅の刃』のような「ほぼ拷問」「生き地獄」な修行シーンも

本作の主人公は実質的に3人いると言っても過言ではありません。2人目の主人公が、なにわ男子の長尾謙杜演じる天涯孤独の青年・才蔵(さいぞう)。彼は兵衛に見出されて、「カエル」となじられても彼についていき、そして成長をしていくという、一種の「師弟もの」の魅力も備えているのです。
室町無頼
(C) 2016 垣根涼介/新潮社 (C)2025「室町無頼」製作委員会
しかしながら、才蔵は兵衛に置いてけぼりにされ、理不尽な「修行」をさせられるという、かわいそうな事態に。修行の具体的な内容はここでは秘密にしておきますが、『週間少年ジャンプ』(集英社)に掲載される漫画のような、特に『鬼滅の刃』(集英社)で見たことがあるようなムチャクチャさで、その「ほぼ拷問」「生き地獄」ぶりを見て苦笑いをしてしまう(もしくはいい意味で笑えない)人は多いでしょう。

しかしながら、才蔵は確かな武術の才能を持っており、修行を経て“六尺棒”の使い手として超人的な成長を遂げます。やはり漫画で見たことがあるような、いい意味での荒唐無稽さもあるアツい展開になるので、中学生ごろのお子さんが見てもワクワクできるのではないでしょうか。また、彼は黒澤明の映画『七人の侍』における最年少のキャラクター・岡本勝四郎にも近い役回りで、そのオマージュに思えるシーンもありました。
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MVPが長尾謙杜だと言える理由
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