
堂々たるエンタメ全開の時代劇に
その内容といえば「”リアル”な風と炎と砂塵が舞う中世の暗黒時代を駆け抜ける、エンタメ全開のアクション巨編!!」という触れ込みが大げさではない超大作! スケール感も半端なものではなく、日本映画および時代劇の1つの到達点を見届けるためにも劇場に駆けつけてほしいです。「刀剣等による殺傷流血の描写がみられる」という理由でPG12指定がされていますが、それも必要なものであり、残酷さや暴力からも逃げなかったことも美点と言えるでしょう。作品のさらなる魅力および万人におすすめできる理由を、キャラクターと入江悠監督の作家性から記していきます。
「無頼」の言葉通り「正しいだけじゃない」主人公
タイトルにある「無頼」とは、広辞苑によると「(1)正業につかず、無法な行いをする者。また、その行為」「(2)たよるべきところのないこと」を指す言葉。シンプルに「アウトロー」と表現もできるでしょう。
具体的には、無用と思えば関所に火をかけたり、役人も平然と斬り殺したりもする始末。一方で、弱り切った人への優しさを感じさせる場面もいくつあり、その根底には確かな人情を感じさせる複雑な主人公像、アウトローもしくは「ダークヒーロー」とさえ言えるキャラクター性が本作の大きな魅力となっているのです。
『鬼滅の刃』のような「ほぼ拷問」「生き地獄」な修行シーンも
本作の主人公は実質的に3人いると言っても過言ではありません。2人目の主人公が、なにわ男子の長尾謙杜演じる天涯孤独の青年・才蔵(さいぞう)。彼は兵衛に見出されて、「カエル」となじられても彼についていき、そして成長をしていくという、一種の「師弟もの」の魅力も備えているのです。
しかしながら、才蔵は確かな武術の才能を持っており、修行を経て“六尺棒”の使い手として超人的な成長を遂げます。やはり漫画で見たことがあるような、いい意味での荒唐無稽さもあるアツい展開になるので、中学生ごろのお子さんが見てもワクワクできるのではないでしょうか。また、彼は黒澤明の映画『七人の侍』における最年少のキャラクター・岡本勝四郎にも近い役回りで、そのオマージュに思えるシーンもありました。