ヒナタカの雑食系映画論 第131回

酷評を浴びたドラマの映画版『アクマゲーム』に「悪くない」感想が上がるワケ

厳しい評判と視聴率となったドラマ版『アクマゲーム』の問題と、上映中の映画版には好意的な評価が寄せられている理由などをまとめます。そこには、今後の漫画の実写化作品が反面教師にするべきポイントがたくさんあったのです。(※サムネイル画像は筆者撮影)

確かなロジックと荒唐無稽さが両立していた原作漫画の魅力

『アクマゲーム』の原作漫画の魅力を簡単に説明しておきましょう。基本的にはほぼ強制的に「賭け」をさせられる「ゲーム」を主軸とした作品で、そのプレーヤーはゲーム中のみ「悪魔の能力」を使うことができます。
 
乱暴な言い方をすれば、頭脳戦と心理戦が展開する漫画およびドラマ『ライアーゲーム』などの「ギャンブルもの」や「デスゲームもの」に、『ジョジョの奇妙な冒険』のような超能力バトルを組み合わせた内容です。

ゲームそのものはシンプルな駆け引きや身体能力が求められるものから、時には複雑なルールが説明されるため理路整然とした攻略方法が求められるものまでさまざま。そこに「悪魔の能力」という「反則気味な」「現実な離れした」(時には役に立たない?)要素が加わっていることも魅力的です。クセの強いキャラクターの掛け合いや、予想外の方法の攻略方法など、グイグイと引き込むケレン味のある展開こそが面白い作品でもありました。

つまりは、ゲームの展開に納得できるロジックをしっかり守り切ること、荒唐無稽さや現実から誇張された要素、その両方が求められるので、そもそも実写化が難しい題材とも言えるのです。

ドラマ版にあった、あまりに多い問題点。楽しむコツは原作者の感想?

そんな原作漫画をドラマ化する方法論として、ドラマ版は第1話からいきなり失敗していると思えました。

漫画の主人公「織田照朝」は「悪魔のカギ」というアイテムを初めて知って、そのまま理不尽なゲームに強制参加させられ、「巻き込まれる」「翻弄される」姿が読者の感情と一致していたのですが、ドラマ版では「悪魔の鍵の秘密を求めて世界を放浪している」ため「途中から始まる」ような印象が強く、さらにはゲームが始まるまで20分以上もかかるため、第1話から「入り込みにくい」構成になってしまっているのです。
 

さらなる問題は肝心のゲーム部分で、第1話の「部屋が極寒のはずなのに息が白くなっていない」作り込みの甘さはまだ許容できたとしても、頭を抱えたのは「原作よりもさらにもう一つどんでん返しを加える」という欲が出た結果としての強引さです。

特に第3話での「それはできちゃダメだろ!」と思うほかない展開に加え、最終話となる第10話では「その単語は口に出してなかっただろ!」「その単語を選んであの判定になるワケないじゃん!」とさらに白けてしまいました。第8話に至っては、なんとゲームの過程そのものを省いてダイジェストにしてしまう有様だったのです。

 

そのような具体的なドラマ版のツッコミどころは、漫画の原作者(作画ではなく物語担当)のメーブ先生のX(Twitter)のポストを見てみるといいでしょう。実際にドラマ各話の視聴後にメーブ先生の感想を読むとめちゃくちゃ楽しめます

メーブ先生は「僕はこのドラマを本当に毎週楽しみにしているのよ。毎週感想を書く前に3回は観るし、最終的に各話10回は観てる」とも投稿しており、途中まではドラマ版をツッコミどころを含めて楽しんでいたことも伝わるのですが……第7話からはかなり批判モードになってしまっていますし、前述した第10話の問題にも容赦のないツッコミを入れています(いずれもネタバレ注意)。
 

はっきり言えるのは、「ツッコミどころがあっても許されるタイプの作品」は世の中にはありますが、『アクマゲーム』という作品ではそこを絶対におろそかにはしてはいけなかったということ。

確かに、原作漫画にもやや無理のある展開はなくはなかったのですが、それでも緻密なロジックを土台にゲームを構築しているからこその面白さがありました。反面、ドラマ版は原作から足した部分や改変の多くが納得できないものになっており、それらのツッコミどころの全てが「どうでもよくなる」ほどに強引でずさんなものだと思いました。
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原作の改変そのものが問題ではない
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