ヒナタカの雑食系映画論 第122回

大人にこそ見てほしい「プリキュア映画」をランキングにしてみた。映画『わんぷり』と併せて見てほしい

映画『わんだふるぷりきゅあ』の公開を記念して、大人も感動する『プリキュア』映画ベスト5を紹介しましょう!(※サムネイル画像出典:映画プリキュア公式X @precure_movieより)

1位:『HUGっと!プリキュア・ふたりはプリキュア オールスターズメモリーズ』(2018年)


映画『プリキュア』には、各シリーズの単独の作品の他に、それまでのプリキュアが勢ぞろいする「オールスターズ」があり、『プリキュアオールスターズ NewStage みらいのともだち』や『プリキュアオールスターズ NewStage3 永遠のともだち』も素晴らしい作品でした。本作では、アニメとしてのクオリティーも、プリキュアを全員活躍させる手法も、いよいよ1つの到達点を迎えたと言っていいでしょう。

歴代のプリキュアが記憶を奪われて赤ちゃんになってしまうという大ピンチになり、序盤から主人公が赤ちゃんたちのお世話のために育児ノイローゼになる展開がリアルで驚かされます。そして、中盤からは『プリキュアドリームスターズ!』(2017年)でもかっこいいアクションが展開していた3DCGの表現へと移り変わり、歴代主題歌のBGMと共にプリキュアたちが次々に技を繰り出して戦う様は、シリーズを知らない人でも圧倒されるのではないでしょうか。

さらに、映画『プリキュア』シリーズの多くでは、劇場公開時に子どもの入場者特典として「ミラクルライト」が配られ、映画館でその光をかざしてプリキュアたちを応援することができるのですが、今回はその「観客参加型」のアイデアと演出もシリーズ最高といえるでしょう。

本作で提示される「思い出」というテーマが、これまで『プリキュア』シリーズを見ている観客の思い出ともメタフィクション的にリンクする構造があまりに秀逸です。悲しみを背負っている悪役までをも救おうとするプリキュアたちの行動は、ファンであればあるほど感動するでしょうし、その優しさは彼女たちを知らない人にも伝わるはずです。

2023年に公開され世界中で絶賛を浴びたアニメ映画『スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース』より5年も前に、日本でも同じく「作品によって絵柄そのものが違うキャラクターが集まりダイナミックなアクションを見せる」大傑作が生まれていた事実は、もっともっと知られるべきです。

他にもプリキュアシリーズの良作はたくさん!

他にも「ループもの」としても秀逸な『プリキュアミラクルリープ みんなとの不思議な1日』(2020年)、かなりギャグ寄りの作風の『キラキラ☆プリキュアアラモード パリッと!想い出のミルフィーユ!』 (2017年)、人気キャラの変身した姿がかわいい『魔法つかいプリキュア! 奇跡の変身!キュアモフルン!』(2016年)もおすすめです。

唯一注意が必要なのは『ふたりはプリキュア Max Heart 2 雪空のともだち』(2005年)の、とある描写。プリキュアが洗脳されて戦い合うという怖くて悲しいシーンがあり、特に「目が座った」表情があまりに「ガチ」だったため子どもたちが泣き出してしまうといった苦情が寄せられ、作り手は大いに反省し、それ以降はプリキュア同士の戦いは封印されることになったのだとか。筆者の3歳の姪っ子は大丈夫だったように見えましたし、友情を主軸にした作劇も、作画のレベルも高い作品ではあるのですが、ショッキングなシーンを見せたくないという親御さんは、本作は避けたほうがベターかもしれません。

総じて映画およびテレビシリーズの『プリキュア』に感じたのは、(作品としてのクオリティーは正直に言って出来不出来の差がかなりあることを認めつつも)、やはり作り手が視聴者である子どものことを真剣に考えているということ。特に映画では劇場で見る作品ならではの特別な体験を提供していることに感動するのです。

それでも本質的なターゲットが子どもであることはずっと変わっていないのですが、作り手の誠実さは大人にも届くはず。最近プリキュアを知ったばかり、まだ知らないという人にもいつか届いて欲しいと、ファンの1人として願っています。ぜひ、映画館で公開の最新作『わんだふるぷりきゅあ!ざ・むーびー!』と併せて楽しんでほしいです。

この記事の筆者:ヒナタカ プロフィール
All About 映画ガイド。雑食系映画ライターとして「ねとらぼ」「CINEMAS+」「女子SPA!」など複数のメディアで執筆中。作品の解説や考察、特定のジャンルのまとめ記事を担当。2022年「All About Red Ball Award」のNEWS部門を受賞。
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