3位:『ドキドキ!プリキュア マナ結婚!!?未来につなぐ希望のドレス』(2013年)
いつかウェディングドレスを着るという未来にときめくも、過去の世界にとらわれてしまうという物語です。主人公の亡き祖母と愛犬の話を主軸にしつつ、それぞれのエピソードから「過去に起こったことは変えられない」「未来に向かうことを恐れない」ことを示すメッセージは、大人こそが希望を得られるのではないでしょうか。
過去と未来を交錯する作劇はかなり手が込んでいますし、ラストに明かされる秘密を知ってから物語を振り返れば、伏線が周到に込められていることもより分かりますし、もう一度見てみたくもなるでしょう。冒頭のガールズトークからもキャラクターそれぞれの特徴を示すのも巧みで、空間を意識したアクションシーンの躍動感と迫力も極まっており、『プリキュア』の魅力を存分に感じさせる内容にもなっています。
そして、子ども向けの『プリキュア』としては禁じ手ともいえる「流血」の場面があります。安易にショックを与えるものではなく、物理的にも精神的にも「痛み」を感じさせるための誠実な演出であり、子どもに見てほしいものだと思えました。ゲストキャラクターを演じる谷原章介の熱演にも聞き入ってほしいです。
2位:『スター☆トゥインクルプリキュア 星のうたに想いをこめて』(2019年)
宇宙人と出会い冒険する、映画『E.T.』のような楽しさがいっぱいの作品です。登場人物たちが沖縄へ行き、たくさんの「思い出」ができていく前半部分はとても楽しいですし、その後にプリキュアが活躍する戦闘シーンもよくできているのですが、何より「ミュージカル映画」であることが重要です。
以前の映画『プリキュア』シリーズでもミュージカルの場面はありましたが、本作ではその試行錯誤の結果でもあるのでしょう……それまでの物語があってこその演出、そして名曲中の名曲『Twinkle Stars』が、感涙必至の感動を届けてくれます。ディズニーが挑戦し続けたミュージカルアニメ映画というジャンルにおいて、本作と『アイの歌声を聴かせて』が共に頂点にあると断言します。
『スター☆トゥインクルプリキュア』はテレビシリーズから「異文化交流」「相互理解」の素晴らしさを分かりやすく伝えていて、宇宙に興味のある(それ以外の多様な)子どもの未来や可能性を作り手が考え抜いていることが分かる作品でした。今回の映画ではさらにそこを突き詰めて、宇宙へのワンダーを示す作品としても、幸福の寓話(ぐうわ)としても完成されています。そして、「歌いながら変身する」シリーズ初の試みを、映画では最上級のミュージカルに仕立てたことも、あまりに素晴らしいと思うのです。