「しなやかマインド」を育てる3つの方法
では、「しなやかマインドセット」を育てるにはどうしたらいいのでしょうか?実は、どちらのマインドセットを持つようになるかは、小さい頃からの親の関わり方や声かけの影響が大きいといわれています。親が子どもとの関わりの中で意識したいことは次の3つです。
1. 能力は伸びることを伝える
これは、シンプルに、「能力は努力すれば伸びるよ」と伝えることです。ある学校で、こんな実験が行われました。Aクラスの子どもたちには、数学者の写真を見せ「この数学者は普通の人だったけれど、数学が大好きで、一生懸命取り組んだ結果、すばらしい発見をしたんですよ」と伝えました。Bクラスでも同じ写真を見せたのですが、そのとき「この数学者は天才で、すばらしい発見をしたのですよ」と伝えたのです。すると不思議なことに、学期の終わりにテストの点がよくなり、算数を好きになったのは、Aのクラスの子どもたちだったのです。「能力は努力すれば伸びると伝えられた→そう信じて努力した→楽しく勉強ができて、結果的に成績も上がった」というポジティブな流れが起きたのでしょう。
2. 結果ではなく、行動やプロセスに注目する
模試の結果が出てきたとき、いい点数を取れていたら、ほめますよね。でもそのほめ方が、逆にこちこちマインドセットを育ててしまっているかもしれません。こんな実験があります。小学5年生500人に簡単なパズルをしてもらいました。簡単なパズルなので、できる子がほとんどです。パズルを解いた子どもたちの半分に対しては「あなたは賢いに違いない」と能力をほめました。もう半分に対しては、「あなたは一生懸命やったに違いない」とその努力をほめたのです。
その声かけのあとで、パズルを解いた子全員に「次にやるパズル」を選んでもらったところ、能力をほめられた子どもたちは簡単なパズルを選び、努力をほめられた子どもたちの9割が難しいパズルを選びました。つまり、能力をほめられた子どもは、「次に失敗したら、能力がないと思われてしまう」と無意識に考えてしまい、挑戦をしなかったのです。
結果にフォーカスするか、努力にフォーカスするかで、こんなに結果は変わります。ぜひ、結果(偏差値や点数)ではなく、お子さんが努力していること(行動 • プロセス)にフォーカスして、それを具体的に伝えてあげましょう。
3. 親が失敗を悪いこととしない
親が失敗を悪いことだと思っていると、子どももそう思うようになります。親が失敗するのは悪いことではないと思っていれば、子どもも自然にそう思うようになります。親だって失敗することがありますよね。そのとき、それを隠さず「ママも失敗しちゃっ た」と言えるかどうかが大事です。「失敗するということは、何かに挑戦した証。うまくい かなかったら、またやってみればいい」家庭の中で、そんな空気をつくれたらいいですね。
受験は「親子の信頼関係」で9割決まる
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「中学受験をしてみようかな」と思っている方には、これからの受験生活を充実したものにするために、そして、中学受験をしているけれど「なんだかうまくいかない」「これでいいのか不安になる」などの悩みがある方には、そのモヤモヤを晴らし、最後まで一緒に伴走するガイド役として、読んでいただけたら幸いです。
この記事の執筆者:中曽根 陽子
数少ないお母さん目線に立つ教育ジャーナリストとして、紙媒体からWeb連載まで幅広く執筆。海外の教育視察も行い、偏差値主義の教育からクリエーティブな力を育てる探究型の学びへのシフトを提唱。お母さんが幸せな子育てを探究する学びの場「マザークエスト」も運営している。『1歩先いく中学受験 成功したいなら「失敗力」を育てなさい』(晶文社)など著書多数。