「ポジティブアプローチ」で関わる
心理学では「できているところに注目し、そこを伸ばしたほうが人は伸びる」ということがわかっています。この関わり方をポジティブアプローチと呼びます。反対に「できないところや問題にフォーカスし、その原因を探って解決しようとすること」をギャップアプローチといいます。ギャップアプローチは、問題解決の手法として一般的に使われますが、悪いところはどこかを見ていくので、ダメ出しになりがちです。 一方ポジティブアプローチは、実現したい未来を考えて、その実現のために具体的にどうするかを考えていくので、革新が生まれやすいといわれています。
私たち大人は、「できないところをできるようにすることが勉強だ」と教わってきているので、子どもの勉強を見るとき、できていないところを指摘し、できるようにしようとします。でも実は先ほどお伝えしたとおり、「できないところよりできるところに注目したほうが、能力は伸びる」のです。
だから、お子さんの能力を伸ばしたいと思ったら、ポジティブアプローチを心がけましょう。できているところに注目し、そこを伝えて励ますのです。できたところを認めてもらった子どもは、まず安心します。そのうえで、さらによくなるためにはどうしたらいいかを考えれば、いろいろな方法を考えつくでしょう。 こういう話をすると、「ほめたらもうこれでい いと思って、やらなくなるのでは?」と言う方がいますが、そうではありません。
できると思えば行動が変わり、結果が変わるから、自尊感情が高まり、さらに理想を実現しようという行動ができる。いい循環が起きるから、いい結果を引き寄せられるのです。
これは受験全体に共通する考え方です。誰にでも苦手科目、得意科目がありますね。親はつい苦手科目を頑張らせたくなりますが、そこに意識を向けすぎると、勉強が苦痛になってしまいかねません。
まずは、得意科目で自信をつけてあげたほうがいいでしょう。お子さんにしてみたら、得意なこと、できることをするので、楽しいし結果も出やすいはず。
得意科目に余裕ができれば、他の科目に時間を割くことができますよね。その中で、不得意科目の攻略法も、具体的に考えてみたらいいと思います。
「子どもの成績が伸び悩む」などネガティブなことが起きたときこそ、親のやるべきことは、ダメ出しではなく、ポジティブアプローチです。
しなやかマインドをセットする
ポジティブアプローチの他に、親ができることが「マインドセットを整える」ことです。困ったことが起きたとき「あーもうだめだ!」と思うか、「なんとかなる」と思うか。この違いは、その人のマインドセットによって生まれます。マインドセットとは、簡単にいうと「無意識の思考のクセ・思い込み」。
近年、知識 · スキルよりも、マインドセットがポジティブであるか否かが、仕事の成果を出すうえで重要だともいわれています。
マインドセットは「成長型(グロースマインドセット)」と「固定型(フィックストマインドセット)」の2種類に大別されます。ここでは、成長型を「しなやかマインドセット」、固定型を「こちこちマインドセット」と呼ぶことにしましょう。
「しなやかマインドセット」は「自分の能力は努力次第で成長させることができる」という考え方であり、「こちこちマインドセット」は「能力は元々決められていて変わらない」という考え方です。
どちらのマインドセットを持つかで、失敗に対する捉え方も変わります。「こちこちマインドセット」の人にとって、失敗は能力が足りない証明なので、失敗する可能性のある挑戦は避ける傾向があります。一方、「しなやかマインドセット」の人にとっては、失敗は成長へのプロセスだと思えるので、挑戦することが楽しいし、少々の失敗でも落ち込みにくく立ち直りも早い傾向があります。