意外と知らないグルメのひみつ 第53回

日本のにんにくは中国産が9割。「国産にんにく」と「中国産にんにく」の違いとは? 3つの産地で比較

和洋中問わず、さまざまな料理に活躍するにんにく。スーパーでは国産だけでなく中国産など海外から輸入されたにんにくも並んでいますが、それぞれどのような違いがあるのでしょうか。今回は国産、中国産、イタリア産にんにくの3種類をさまざまな視点から徹底比較してみました。

国産(青森県産)にんにくの特徴は?

青森県産にんにく
青森県産にんにく
まずは国産(青森県産)のにんにくから。青森県の中でも特ににんにく生産の盛んな十和田市のもので、「福地ホワイト」という品種です。

1つ約50グラムで税抜198円(購入時)でした。寒冷地のにんにくらしい、真っ白で美しい見た目です。
青森県産にんにく
青森県産にんにく
中身を割ってみると、同じくらいの大きさのりん片が6個並ぶ「六片種」でした。大きさもそろっています。別の産地のにんにくとともに味を確かめてみたいと思います。

中国産にんにくの特徴は?

中国・山東省産にんにく
中国・山東省産にんにく
続いては中国産にんにく。一般的なスーパーでは中国産にんにくを見つけることができなかったため、業務用商品を多く取り扱うスーパーで入手しました。1つずつの重さは約40グラム、3個で98円とかなりお買い得です。

こちらは中国の主なにんにく生産地である山東省で収穫されたもの。中国産は量産体制による農薬の大量散布など安全性も気になるところですが、本商品は契約農園での特別栽培農産物に指定されているそうで、タグの裏面には農薬の使用目的や回数なども明記されていました。
中国・山東省産にんにく
中国・山東省産にんにく
正確な品種名は書かれていませんが、カットすると複数のりん片が入っている「多片種」系統のようでした。やや茶色がかっていて、全体的に小粒の印象です。

イタリア産にんにくの特徴は?

イタリア・モリーゼ州産にんにく
イタリア・モリーゼ州産にんにく
こちらはあまり見かけないイタリア産にんにく。私鉄系のスーパーマーケットにて、1個98円で購入しました。イタリア中部に位置するモリーゼ州で生産されているもので、高収量品種のフランス品種とスペイン品種を掛け合わせたものだそう。こちらの会社ではモリザーノ地区産のホワイト種に加え、シチリア産の赤にんにくも取り扱っているとのこと。
イタリア・モリーゼ州産にんにく
イタリア・モリーゼ州産にんにく
中身は中国産にんにくとやや似ている「多片種」系統の様子。こちらもやや茶色がかっています。
左から、中国産、青森県産、イタリア産にんにく
左から、中国産、国産(青森県産)、イタリア産にんにく
3種類を並べた図がこちらです。スライスしたものに鼻を近づけて香りを嗅いでみました。筆者の個人的な印象はこのような感じです。

・国産(青森県産)→刺激臭が少なく、やや甘さのあるマイルドな香り
・中国産→刺激臭は少なく、やや薫製のような香り
・イタリア産→3種類の中では一番マイルドな香り

「にんにく水」で飲み比べてみた

2024年6月に放送された『あしたが変わるトリセツショー』(NHK)にて、「にんにくの香りのもとである「アリイン」はコク味物質でもあり、スライスしてお湯に入れるとうまみが増す」との紹介がされていました。

そこで筆者も同番組にならい、上記3種類のにんにくをスライスしてお湯に入れ、飲み比べてみました。作り方は、沸騰したお湯500ミリリットルににんにくスライス約3グラムを入れて5分待つだけ。それぞれを小さなカップに入れたものがこちらです。

にんにく水で比較
左から中国産、国産(青森県産)、イタリア産にんにくで作ったにんにく水

お湯の色が一番変わっていたのは中国産のもの。味も3種類の中ではにんにくのパンチが一番効いていて、にんにくらしさがありました。国産(青森県産)は、口当たりがまろやかで甘い印象。イタリア産は、にんにくの辛みがお湯に移り、キリッとした印象です。

3つの産地のにんにくをにんにく水で比較
3つの産地のにんにくをにんにく水で比較

また、中国産、国産(青森県産)のにんにくスライスは5分以内に沈みましたが、イタリア産はなぜかお湯に浮いていました。全て沈んだのは約20分後。理由は定かではありませんが、お湯を吸収しにくい品種ということなのでしょうか。

中国産にんにくと国産にんにくの違いとは?

中国産、国産、イタリア産という3種類のにんにくを比べてみました。産地や栽培環境の差はありますが、今回食べ比べたにんにくの場合、それぞれの品種系統が異なることが大きな違いだと挙げられます。

さらに、国産として青森県産の「六片種」を選びましたが、九州や四国で主流の「多片種」と比べれば、違う結果になる可能性があります。味の面での選び方としては、「にんにくのマイルドな甘みを楽しみたい時は国産」「にんにくらしいパンチを感じたい時は中国産」「キリッとした辛みを感じたい時はイタリア産」と使い分けるのが良いのではと感じました。

にんにく水で作ったペペロンチーノ
一般的には生のにんにくで1日1片、加熱したにんにくで2~3片程度が適量といわれています

最後に、先ほどのにんにく水でパスタをゆで、ペペロンチーノを作ってみました。にんにくのホクホクとした食感とともにいつもよりうまみが濃いようにも感じられました。

にんにくは食べ過ぎると「アリシン」の作用で下痢や腹痛を引き起こす場合があるため注意が必要ですが、ぜひ一度、にんにくを産地違いで食べ比べてみてはいかがでしょうか。

この記事の筆者:田窪 綾 プロフィール
調理師免許を持つフリーライター。約8年間のレストラン・キッチン勤務経験を生かし、食分野を主軸に活動中。飲食店&新商品取材、オーナーインタビュー、グルメコラムを中心に、「ツギノジダイ」「近代食堂」など複数メディアで執筆を行う。

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