ヒナタカの雑食系映画論 第96回

映画『デデデデ』が大傑作になった5つの理由。『前章』『後章』の構成の意義と、現実に投げかける希望

『デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション 後章』が公開中です。本作が「今の時代に必要な作品だ」と心から思えた、大傑作になった理由を解説しましょう。(C) 浅野いにお/小学館/DeDeDeDe Committee

1:楽しい青春の裏で「虐殺」が行われる

今回の『後章』の内容をざっくりと言うのであれば、「若者たちがキャンパスライフを楽しむ最中、人類滅亡のカウントダウンが刻一刻と進む」というもの。もっと端的に言えば「青春を謳歌(おうか)する中でも周りでは異常事態が進行していく」という内容です。
デデデデ
(C) 浅野いにお/小学館/DeDeDeDe Committee
主人公たち仲良しチームは、怪しいけど人の良さそうな先輩がいるオカルト研究会に入部し、海へと合宿に行ったりもして楽しそうな様子。ギャグもおかしくてクスクスと笑えます。

しかし、『前章』に続き巨大なUFOが東京の上空にあることに加えて、街では侵略者が次々に人間たちに殺されてしまいます。これが、ロシアによるウクライナへの侵攻、イスラエルによるガザ地区侵攻という、2024年の今まさに続いている戦争、いや一方的な虐殺を連想させるのです。
デデデデ
(C) 浅野いにお/小学館/DeDeDeDe Committee
劇中で、客観的には「自分たち人間とそう変わらない存在」に見える侵略者たちが次々に「駆除」という名目で虐殺される様は、「こんなことになるはずがない」とも思ってしまいます。

しかし、現実の世界であれほどのひどいことが起きていることを思うと、絵空事でもないのだと感じ、とても悲しくなります。そして、「人間はこれほどまでに残酷なことができる」ことを示すためにも、やはりPG12指定の殺傷流血の描写は必要だったのです。

2:現実とのシンクロは他にもある

その虐殺が起こるより前の、『デデデデ』の原作漫画もしくは『前章』の物語の時点で、現実のコロナ禍を連想した人は多くいました。

これまでの日常が失われ、SNSでの風説に惑わされ、極端な考えに傾くばかりか、危険な陰謀論に染まったり、対立や分断も起こる。しかし、それでも日々を過ごしていくしかない。閉塞的で未来は不安でいっぱいではあるけれど、それでも楽しいことがないわけでもない……。

そのような描写から(そもそも2011年の東日本大震災をモチーフにしている部分もあるのですが)、2014年に連載が始まった原作漫画は、後の2020年以降の現実を「予言」したかのようだとも話題になっていたのです。
デデデデ
(C) 浅野いにお/小学館/DeDeDeDe Committee
さらに、この『後章』では、ただただ一方的な虐殺という、人間の歴史上繰り返され続けた(しかも今まさに現実で起こっている)恐ろしく愚かで間違った事態が描かれるのですが、それをよしとはしない人間もいる、ということも重要です。

何しろ、その虐殺をやめさせるため、デモ活動を行っている若者たちもいます。彼女らのほとんどは、ドライでしんらつな視点も交えつつ、真摯(しんし)に問題へ向き合い行動する尊い人たちに思えましたし、それは後述する「善意」を信じる物語に確実につながっています。

それ以外でも、社会問題に対しての多数の思想の交錯は、世界中でも、この日本においてもあるものです。本作は完全にフィクションではありますが、「今の現実の世界とのシンクロ」に注目してほしいのです。
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女の子2人の友情を超えた「絶対」の物語
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