3:主人公の性格が悪い。だけど、それだけじゃない。
その不穏さが見え隠れする1番の理由は、端的に言って主人公の性格が悪いこと。いや、どちらかと言えば、物語が進むにつれて、主人公の身勝手さ、言い換えればエゴ、それどころか「狂気」さえ見えてくることが、本作の見どころです。
それでも、そういう打算的な考えは抜きにして、主人公は自身がかわいいと思った女の子と友達になりたいと心から願っているようにも見えますし、誘われた彼女たちそれぞれも(モチベーションは低いようでも)アイドルになるのをまんざらではないと思っているフシもあります。
だけど、そこには全く単純ではない、「嫌悪感」を含んだ複雑な感情が交錯していることが、会話の端々から伝わってくるでしょう。
4:「夢」が、恐怖や狂気をまとう「現実」へと変わる瞬間
例えば、主人公は「かわいい子を見るたびに思うんだ、アイドルになればいいのにって」「私はみんなをアイドルにしたい。そのためのきっかけを作りたい」などと自分の考えを語っています。
そして不穏な空気は、ある一点ではっきりとした「恐怖」として顕在化します。下手なホラー映画よりも怖いその瞬間は、人によっては主人公を嫌いになってしまいかねない、もはやトラウマ級といっていいものでした。
それでも、主人公の「私が選び抜いたメンバー。私の目に狂いはなかった。私たちが、東西南北が、本当のアイドルになるために。私がみんなを、もっともっと輝かせてみせる」という「夢」が、やがて狂気をまとう「現実」へと向かうことから、決して目をそらさないでほしいのです。