ヒナタカの雑食系映画論 第91回

GWの映画館は『名探偵コナン』のひとり勝ちだったのか。アニメ映画の観客を「他作品」に呼び込む重要性

『名探偵コナン 100万ドルの五稜星』の興行収入が、120億円を超える超大ヒット記録を更新中。まさにGWで「ひとり勝ち」ともいえる状況ですが、それを踏まえた上での未来への期待を語ります。(※サムネイル画像出典:(C)2024 青山剛昌/名探偵コナン製作委員会)

日本の実写映画にも注目してほしい

その他の大ヒット作で目立つのは、やはり日本の実写ホラー映画『変な家』。3月に公開され春休みに多数の若者を動員した上に、上映回数が少なくなったGWに入っても高稼働が続き、8週目で興行収入は47億円を突破したのです。「大きなブームを作るのは若者である」ことの証明といえるでしょう。

個人的に注目して欲しいのは、その『変な家』以外にも優れた日本映画が公開されているということ。特に推したいのは『バジーノイズ』と『青春18×2 君へと続く道』。前者は「孤独」と「関わり」の両方を肯定し、後者はかけがえのない青春の日々を美しく描く、絶賛の声も納得の、若者にこそ推したい名作になっていました。
 
 
結論としては、『名探偵コナン』も『ハイキュー!!』も素晴らしい、でもほかの映画にももっと注目が集まってほしいと、映画ファンの1人として願ってやまない、ということです。

そのためには、「知らない作品の良さ」を知らしめるための、見た人それぞれの口コミが重要になってくるでしょう。『金曜ロードショー』で『名探偵コナン』やジブリ作品以外の映画が地上波放送するなど、より多くの映画が見られる機会も増えてほしいものです。

また、ミニシアターではやはり苦境は続いているのものの、『悪は存在しない』『あまろっく』『辰巳』といった、公開規模が大きくはない日本の実写映画にも観客が多く入っているという声も耳にします。

そして、人気作と、そうではない映画との「二極化」「格差」が広がっていることをネガティブに捉えすぎず、『名探偵コナン』や『ハイキュー!!』のために多くの人が映画館に訪れている、映画館に映画を見に行く人の絶対数が確実に増えていることは、ピンチではなくチャンスでもあると、前向きに考えたいのです。その上で、これからの映画業界が多様化し、さらに盛り上がることも祈っています。

この記事の筆者:ヒナタカ プロフィール
All About 映画ガイド。雑食系映画ライターとして「ねとらぼ」「CINEMAS+」「女子SPA!」など複数のメディアで執筆中。作品の解説や考察、特定のジャンルのまとめ記事を担当。2022年「All About Red Ball Award」のNEWS部門を受賞。
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