多くの人が「信頼」を寄せている
『名探偵コナン』と『ハイキュー‼︎』がなぜここまでの大ヒットとなるのか。もちろん国民的な人気を獲得したコンテンツであることはもちろん、「見たいものを見せてくれる」という「信頼」も大きいと思います。映画『名探偵コナン』は謎解きやアクションといった万人が楽しめる要素がそろっており、近年では個性豊かでかっこよくて愛され続ける多くのキャラクターたちをメインの物語上に配置させ、活躍させることが実にうまく、長年のファンはもちろん新規のファンも加速度的に増やしているのでしょう。その甲斐あって、「GWの風物詩」「一種のお祭り」にもなっていると思います。
『ハイキュー‼︎』で描かれるのは原作漫画における屈指の人気エピソード。テレビアニメ版の評価も高く、その放送終了から3年余りがたち、「やっと続きが見られる」からこそ、ファンが公開後すぐに駆けつけて超ロケットスタートを切ったこと、その後のリピーターを生んだことは間違いないですし、その圧倒的なファンの熱量や口コミでの称賛が、原作ファン以外にも「信頼できる作品であると証明」されたのでしょう。
やはり気になるのは格差?
そんなふうに『名探偵コナン』と『ハイキュー‼︎』の大ヒットが喜ばしいと思える2024年のGWですが、その上でやはり気になるのは、ほかの映画作品との「二極化」「格差」が広がっているように思えること。「映画館に居場所がないように思える」「アニメばかりで洋画離れが進んでいる」など、映画ファンから嘆きにも似た言葉が聞こえてきました。これは、ある程度は致し方ないとは思います。わざわざ映画館まで足を運び、一般料金では2000円を払うことになる劇場鑑賞では、失敗をしたくないという心理が働いて、誰もが見る、「信頼」がおける映画にさらに人が殺到するのも、当然といえば当然でしょう。
また、『名探偵コナン』と『ハイキュー‼︎』が映画館にたくさんの人を呼び、映画館の経営および映画産業を支えていることも事実。
作品の圧倒的な人気による「まるで時刻表」な上映回数のために、他作品の上映規模や回数が制限されるのは、確かに映画ファンとして心苦しくありますが、それほどに人気作に観客が詰めかけている現状では、それもまた正しい判断だと思うのです。
コナンとコラボ中の『ゴジラxコング』にも期待
これから重要になってくるのは、「ほかの作品にも観客を呼ぶ」ことでしょう。『名探偵コナン』や『ハイキュー!!』を見にくる人に向けて、洋画や他作品を「こっちもいいよ!」とアピールをしてこそ、希望を持ちたいとも思うのです。映画配給会社にも、その意識があることは間違いありません。例えば、『名探偵コナン 100万ドルの五稜星』と『ゴジラxコング 新たなる帝国』が「禁断の共闘」というつながりで、コラボ動画やポスターが作られていたりもします。
なお『ゴジラxコング』は、公開2週目の5月6日までに12億円を突破するヒットに。ただ、同作は全世界の興行収入が5週目で約850億円とゴジラ映画史上でも屈指の大ヒットをしているので、日本ではやや盛り上がり不足といえるかもしれません。
『ゴジラ -1.0』が劇場公開中&Amazonプライムビデオの配信中ということもありますし、今後の伸びを期待したいところです。
『あぶない刑事』との納得のコラボも
さらに注目なのが、『名探偵コナン 100万ドルの五稜星』と、5月24日公開の『帰ってきた あぶない刑事(デカ)』がコラボしていること。前者は東宝、後者は東映と、配給会社の垣根も超えているのです。筆者は実際に試写で『帰ってきた あぶない刑事』を見たのですが、なるほど両者は共通しているところが多くありました。どちらも「探偵もの」であり、日本を舞台にしながらも銃撃戦やアクションがあり、依頼人との関係性が物語をけん引しているのですから。さらには、他シリーズを知らなくても問題なく楽しめる作りになっていることも同じです。
思えば、日本の実写映画では大規模なアクションの撮影そのものが難しく、その楽しさや迫力をアニメを持って提示してくれる『名探偵コナン』の映画は貴重な存在ともいえます。その難しい中でも、現状で最もそちらに近いアクションやエンタメ性を、実写で提示してくれる『帰ってきた あぶない刑事』も、やはり多くの人に見てほしいのです。