3:『アラジン』は人種にこだわった配役も含めて絶賛の嵐に
2019年の『アラジン』はディズニー実写映画の最高傑作の呼び声が強い1本。2017年に「2000人をオーディションしても、歌って演技もできる中東系もしくはインド系の新人俳優が見つからなかった」と報道がされるほどキャスティングには難航していたものの、実際に抜てきされたメナ・マスードの抜群の身体能力、ナオミ・スコットが表現した主体的なヒロイン像は、オリジナル版の尊重、その舞台および人種にこだわった配役としても完璧というほかありません。
オリジナル版からの変更点で特に大きいのは、ヒロインの親友でもある侍女を登場させたこと。「1人ぼっちの王女のために親友を創造させる」作り手の優しさを感じましたし、ほかにもランプの魔人ジーニー役のウィル・スミスのハイテンションぶり(と垣間見える寂しさ)や、その他の細かな変更点、実写ならではの幕切れも理想的というほかありません。今後のディズニー実写映画化においても、1つの指針となるでしょう。
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4:『ムーラン』は内容とは異なることで炎上、映画本編もやや賛否両論に
2020年の実写映画版『ムーラン』は、残念ながら映画本編の内容とは異なることで炎上してしまいました。中国系アメリカ人俳優のリウ・イーフェイの起用が発表された時は支持を得たものの、そのリウ・イーフェイが香港での抗議デモを鎮圧する中国警察を支持する声明をSNSに投稿したため、批判が殺到。さらに、強制収容が指摘される場所での撮影が判明し、少数民族迫害を容認しているのではないか、という怒りの声も届いたのです。
映画本編の評価はやや賛否両論。オリジナル版からミュージカル要素がなくなり、コミカルな龍のキャラクターが除外され、代わりに悪役となる「魔女」と主人公の関係がクローズアップされるなどのアプローチがされているほか、ワイヤーアクションを多用した剣闘シーンにも好みが分かれるのは致し方ないでしょう。
しかし、実写にしたことで主人公が男性社会の中で男装し活躍する上での意図的な「居心地の悪さ」が強調されており、男尊女卑への批判的なメッセージ性がより際立っていたことは支持をしたいポイント。クライマックスのアクションも、実写ならではの躍動感とカタルシスがあったと思います。