ヒナタカの雑食系映画論 第75回

実写映画『アラジン』、アニメ版とはどう違う?作品をさらに魅力的にした「改変ポイント」5つを徹底解説

2019年の映画『アラジン』が、アニメ版から明確に変わった、はたまた、実写ならではの魅力へとなったポイントを解説しましょう。(※サムネイル画像出典:(c) Disney Enterprises, Inc.)

アラジン
『アラジン』(c) Disney Enterprises, Inc.
※画像出典:日本テレビ『金曜ロードショー』公式Webサイト
2024年3月1日、『金曜ロードショー』(日本テレビ系)にて、2019年公開の実写映画『アラジン』が放送されます。

本作は1992年公開のアニメ映画からの改変がいくつかあり、新たな楽曲『スピーチレス 〜心の声〜』が鳥肌の立つような演出と共に歌われることもその1つ。既存の名曲もアレンジされ、実写で生身の人間が演じ歌う姿を映してこその、ミュージカル映画としての魅力も際立っているともいえるでしょう。
 
ここでは、さらなる「実写ならでは」の魅力や具体的な改変ポイントを、初めはネタバレなし、途中から警告後にネタバレありで記していきましょう。

1:実写映画オリジナルキャラクターの侍女・ダリアの存在

アニメ版からの分かりやすい改変ポイントの筆頭は、実写映画オリジナルキャラクター・ダリアの存在です。王妃であるジャスミンの侍女でありながら気兼ねなく助言もくれる親友でもあり、この2人が結婚や恋愛について語り合う様はほほ笑ましく見られるでしょう。
そのダリアとの会話では「男性と結婚することで将来が左右されてしまう(男性に依存しすぎる)こと」への危うさも指摘されています。ジャスミンはもともと精神的な強さを持つ女性ですが、親友であるダリアの助言が後押しにもなり、さらに「主体的に決断ができる」様が強調されているのです。

また、アニメ版でのジャスミンは「(トラのラジャー以外には)本当の友達だっていないわ」と口にしていたこともありました。今回の実写映画は、いわば、以前は友達がいなかったジャスミンのために、親友となるキャラクターを創造してくれた、「IF」をかなえてくれたような優しさを感じるのです(ダリアのさらなる役割はほかにもあるのですが、それはネタバレになるので後述しましょう)。

ちなみに、ダリアを演じたナシム・ペドラドはテレビ番組の『サタデー・ナイト・ライブ』での出演で知られるコメディエンヌでもあり、そちらでのパロディコントでジャスミンを演じていた、というめぐり合わせもあるのです。

さらに余談ですが、Disney+(ディズニープラス)で見られる『塔の上のラプンツェル』のスピンオフアニメ『ラプンツェル あたらしい冒険』『ラプンツェル ザ・シリーズ』では、侍女かつ護衛役のカサンドラというキャラクターが新たに登場しており、責任感にあふれた性格や物理的な強さも含めてとても魅力的です。実写映画版『アラジン』の「お姫様と侍女の関係性」が好きになった人は、ぜひこちらも見てほしいです。

2:ガイ・リッチー監督の作家性が活かされた内容に

実写映画版『アラジン』の監督は、『ロック、ストック&トゥー・スモーキング・バレルズ』や『スナッチ』が熱狂的な支持を得たガイ・リッチー。その作家性である凝った画作りやスタイリッシュな演出が、見た目のゴージャスさやアクションの躍動感が求められる『アラジン』という題材にバッチリハマったともいえるでしょう。

さらに、ガイ・リッチー監督は『シャーロック・ホームズ』や『コードネーム U.N.C.L.E.』で「バディもの」も手がけており、その関係性の変化や尊さを描く手腕も、今回の『アラジン』でのジャスミンとアラジン、アラジンと魔人ジーニー、ジャスミンとダリアという、それぞれのキャラクターの掛け合いに生かされていたのではないでしょうか。

また、2024年2月23日より劇場で公開されている、ガイ・リッチー監督の新作映画『コヴェナント/約束の救出』は、「頑固な軍曹」と「心優しく理性的な通訳」が共に死地をくぐり抜けるという、まさにバディものの魅力に満ちた傑作でした。
 
判断を誤れば死につながるハラハラドキドキの状況が続きつつも、約束を反故(ほご)にするアメリカ政府への怒りが込められた、エンターテインメント性と社会派ドラマを両立させた万人向けの内容でもあります。『アラジン』と合わせて見れば、全く異なるジャンルでありながらも、共通する要素とエンタメ作家としての力を再確認できるでしょう。
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アニメ版のオープニングで現れる「行商の男」の正体
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