多くの人が納得できるバランスになっている作品も多い
こうしてまとめると、やはり最近のディズニーの実写映画は配役への批判が目立つものの、物語そのものはオリジナルを尊重しつつも「そのまま」にはせず、現代ならではの価値観をアップデートする作品が多く、ゆえに、多くの人が納得できるバランスになっていると感じます。個人的には、人種が特に定まっていないキャラクターであれば、他の人種の役者が演じても構わないとも思うのですが、『ムーラン』『アラジン』という舞台や人種がはっきりしている作品であれば、それ以外の人種が演じるのは筋違いになってしまうとも感じます。この2作で、人種にこだわったキャスティングがされたことも支持したいのです。
『白雪姫』に批判が寄せられるものの、それでも期待したいこと
その上で、今後のディズニー実写映画化の企画も楽しみなのですが、残念ながら2025年3月21日に全米公開予定である『白雪姫』の実写リメイク『Snow White and the Seven Dwarfs(原題)』が、またしても配役の部分で批判されているのも事実です。 ラテン系アメリカ人のレイチェル・ゼグラーが配役された時から、批判を超えた人種差別的、誹謗(ひぼう)中傷と捉えられる書き込みが続出し、レイチェル・ゼグラー自身が「オリジナル版は女性の社会的地位や役割に対する考え方が古い」などと否定的な発言を繰り返したことが、火に油を注いでしまいました。さらに、『白雪姫』のオリジナルの監督を手掛けたデヴィッド・ハンドの息子は、「Woke(本来は人種を理由にさらされる脅威や不平等への意識の意味)にこだわるあまり、物語からキャラクターから何もかも変えてしまうなんて、はっきり言って過去の名作を侮辱する行為」と、実写映画版に否定的なコメントもしています。
どちらの意見も一理あるとは思えるのですが、やはり実際に映画を見てみないとオリジナル版を尊重しているかどうかは分かりませんし、配役や発言だけで作品を全否定するのもまた極端であると思います。
例えば、新たな価値観を提示しつつ、昔ながらの「王子様との結婚」を否定しないのは、実写映画版『シンデレラ』はもちろん、2009年のディズニーのアニメ映画『プリンセスと魔法のキス』でも描かれたことでした。
また、これからのディズニーの実写映画では、往年の人気のあるアニメのリメイクばかりではなく、新たな作品で人種の多様性を推していくことも、必要になっていくのかもしれません。
「ポリコレ」という言葉を使うと単純な批判になってしまいがちですが、多様性を提示し、それによってより多くの人への勇気や希望を与えるディズニーのアプローチそのものは、大いに支持したいと改めて思います。実際にこれらの実写映画を見て、そのことを考えることにも、確かな意義があるはずです。
この記事の筆者:ヒナタカ プロフィール
All About 映画ガイド。雑食系映画ライターとして「ねとらぼ」「CINEMAS+」「女子SPA!」など複数のメディアで執筆中。作品の解説や考察、特定のジャンルのまとめ記事を担当。2022年「All About Red Ball Award」のNEWS部門を受賞。