7:『ピーター・パン&ウェンディ』は新たな物語の解釈が面白い
2022年の実写映画版『ピーター・パン&ウェンディ』もまた、内容は賛否両論の評価となりましたが、個人的には支持をしています。オリジナル版の物語の流れを踏襲しつつ、ピーターとフック船長の愛憎入り交じる関係性が描かれ、「なぜ2人は仲違いをしたか」の理由を解き明かすとともに、フック船長を「大人になれなかった」悲しい存在として描く、新たな物語の解釈に意義を感じたからです。ウェンディの素質を「現実主義的」にするのも今ならではの価値観のアップデートでしょう。
そして、こちらも配役が批判を呼んでしまいました。妖精ティンカーベルを演じたのが、アフリカ、イラン、インディアン部族のルーツを持つ俳優のヤラ・シャヒディだったからです。しかし、実際に見てみれば、怒った顔も含む表情の愛らしさ、緑のワンピースや結んだ髪形はティンカーベルそのもので、個人的には抵抗なく受け入れることができました。
そのほか、ウェンディ役のエヴァー・アンダーソン(ミラ・ジョヴォヴィッチの娘)、ピーター役のアレクサンダー・モロニー、「ロスト・ボーイズ」の1人を演じたダウン症の俳優であるノア・マシューズ・マトフスキーも、見事にハマっていた、的確なキャスティングだったと思います。
8:『リトル・マーメイド』は圧倒的な画で多様性を示していた
2023年の『リトル・マーメイド』は特に配役が炎上してしまった例として、多くの人に認識されていることでしょう。主人公のアリエルをアフリカ系の歌手であるハリー・ベイリーが演じており、実際に映画を見た人からは伸びやかな歌声や愛らしいキャラクター性を支持する声が多かったものの、それでもオリジナル版とイメージが異なるという反発の声は大きく、日本でも大きな論争を呼びました。
映画の内容としては、オリジナル版から大筋の物語を変えることなく、多様性の素晴らしさを訴えることに成功していると思います。たとえば、アリエルと王子が同じく「収集家」でオタクな面を見せたり、人間の市場でたくさんの商品があることを見せたり、何より圧巻の画が映し出されるラストなど、実写映画ならではのアレンジが生きているのです。ハリー・ベイリーの表情の固さを指摘する意見も多かったですが、個人的には実写ならではの「オーバーにしすぎない」演技として的確だったと思います。
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