世界を知れば日本が見える 第43回

大谷翔平選手に「忖度」がないアメリカ。メディアで言及される“矛盾点”を時系列順に整理した

連日取り沙汰されている、大谷翔平選手の元専属通訳・水原一平氏による違法賭博スキャンダル。アメリカではどう報じられているのか。(サムネイル画像提供:Los Angeles Dodgers/UPI/アフロ)

「非常に複雑」違法賭博問題にアメリカメディアも混乱

現在、大谷選手については、水原氏の違法賭博に関する捜査の進展があまり表沙汰にならないので、記事も少し落ち着いている。だがスポーツ専門局ESPNや新聞社などは、オピニオン記事を掲載していて、水原氏と大谷選手、ドジャース関係者らの発言が二転三転したことや、胴元への大谷選手の送金に関する矛盾点なども改めて問うような報道が行われている。

そもそもこのニュースは次々と話が出てきたこともあって、アメリカのメディアでも「非常に複雑」と書かれるほどだ。情報が散らばっているので、ここで騒動の流れを少し振り返ってみたい。

違法賭博問題の渦中にいる水原氏は、大谷選手が2017年にメジャーリーグに進出する際に、大谷選手の通訳となり、公私ともに非常に近い関係になっていた。大谷選手は、2017年にロサンゼルス・エンゼルスに入団して2023年には打者と投手の二刀流で大成功し、ホームラン王にも輝いている。2024年には、同じ西海岸のチームであるロサンゼルス・ドジャースに、10年で7億ドルというMLBでも史上最高額の契約を結んだ。

事の発端は? 時系列順に整理

今回の問題は、ドジャースのMLB開幕戦が行われた2024年3月に韓国で動き始めた。初期の動きは、最初にこの話をつかんだとされるアメリカのスポーツ専門局ESPNのリポートを参考にする。

3月18日、大谷選手が韓国にいる間、MLBコミッショナーも大谷選手に絡んで動きがあることを知り、ESPN記者も取材に動き出している。

3月19日、ESPN記者は大谷選手の代理人であるネズ・バレロ氏に連絡。南カリフォルニア在住の違法賭博の胴元で連邦捜査の対象になっているマシュー・ボウヤー氏に、大谷選手の名前で2度の電信送金(2023年9月と10月に50万ドルずつの合計100万ドル)があったことなど、判明した情報について直撃した。だがバレロ氏からの回答はなかった。

同日、大谷選手側が新たに雇った危機管理広報担当者が、ESPN記者への対応に当たる。そして、この担当者は初めて、大谷選手が水原氏の代理で支払いをしたと記者に語った。水原氏が大谷選手の代理人であるバレロ氏に白状して、その支払いが事実だと認めたという。この担当者はさらに、「大谷が『そうだよ、何度か大金を送金した。送金できる最高額だった』と述べた」とESPN記者に言った。

またこの担当者は、ESPN記者がすでに別の情報源から得ていた水谷氏の賭博の借金が少なくとも450万ドルである、という情報を「真実」だと認めた。ESPN記者は水原氏と直接話をしたいと取材を要請。1時間後に、韓国にいた水原氏への90分におよぶ電話取材が行われた。
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水原氏、大谷選手それぞれの主張の矛盾点
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