ヒナタカの雑食系映画論 第82回

『変な家』大ヒットの一方で“賛否両論”の理由と、直近の日本ホラー映画7作品から期待できること

ホラー映画『変な家』が大ヒット記録を更新中です。しかし、その評価は賛否両論。その理由を記しつつ、新たな可能性を探り、そして発見しつつある、2022年以降公開の日本のホラー映画7作品も紹介しましょう。(※(C)2024「変な家」製作委員会)

1:『きさらぎ駅』(2022年)

ネット上で都市伝説として語られている架空の駅をモチーフとした作品で、こちらもYouTubeで「怖い話」の動画を見る若者にリーチしたためか、上映規模が小さめながらスマッシュヒットをしました。

内容も作り手のサービス精神が全開で、序盤の主観視点の不気味さ、後半のギミックの楽しさ、そして怖さよりも笑いのほうが勝るサプライズなど、アイデアを最大限に生かした見せ場が満載。何より「異世界」でさまよう感覚をしっかり作り出したことも称賛に値します。

永江二朗監督作は、コロナ禍を背景にした『真・鮫島事件』(2020年)、ネタバレ厳禁の展開が待ち受ける『リゾートバイト』(2023年)も面白かったですし、その最新作にして60分全編を主観映像で描く『FPS』が2024年3月29日より東京・イオンシネマ板橋と神奈川・イオンシネマ海老名で限定的に公開中です。今後が最も期待できるホラー映画監督なので、将来的には大きな予算がかけられた作品にも期待したいです。

2:『“それ”がいる森』(2022年)

『リング』の中田秀夫監督の作品ですが、はっきり言って世間的な評価はかなり酷評気味。予告編では明かされていない、“それ”の正体には悪い意味であきれる人も続出していました。開始から25分ごろの“まさか”の光景にワクワクできるか、それともがっかりするかでも評価は分かれるでしょう。

しかし、筆者個人は本作が大好きです。「周りに話しても誰も信じてくれない」というホラー映画の定番はしっかり踏襲していますし、子どもが脅威に遭遇するジュブナイル要素もふんだんで、後半のツッコミどころ満載かつ予想の斜め上の展開も、一周回ってギャグとして楽しめました。発想そのものが時代に逆行しているようにも思えますが、その「古き良き文化」を令和のこの時代によみがえらせる試みは、一周回ってフレッシュに思えるほどです。

さらに、中田秀夫監督の2023年公開作にして小説の映画化作品『禁じられた遊び』は、さらにエンターテインメント性に振り切った作品になっていますので、まずは気軽に見てみてほしいです。

3:『カラダ探し』(2022年)

原作は小説投稿サイト「エブリスタ」で話題を集め、漫画化もされた人気作。橋本環奈や眞栄田郷敦ら旬の人気若手俳優の出演もあって、興行収入は11億8000万円と優秀な成績を残した作品です。内容はやはり若者に人気の「ループもの」というジャンルに、ホラーはもちろん、「青春もの」も掛け合わせています。

同世代の男女が同じ時間を繰り返す中で信頼し合い、絶望的な状況下でも道を探し、時にはあっけらかんと青春を謳歌(おうか)する様は、なるほど若い人に受ける要素がそろっていると感心しました。それでいて、PG12指定納得の残酷な描写も攻めています。
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コメディーに振り切った「貞子」
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