4:『貞子DX』(2022年)
ご存じ、アイコニックなホラーキャラクター・貞子をフィーチャーした『リング』シリーズの最新作。何よりの特徴は、ほぼほぼコメディーに振り切っていること。川村壱馬がイケメンがいい意味で台なしな“ウザキャラ”に扮(ふん)するギャグセンスは好みが分かれるところですが、「そういう作風」だと割り切ればとっても楽しい内容に仕上がっていましたし、意外にも(?)しっかり怖いシーンもあります。それでいて、呪いのビデオを見てから死ぬまでの時間は『リング』の1週間から24時間へと大幅に短縮され、その死ぬ理由や解決方法を論理的な思考を持って立ち向かう様はなるほど『リング』を踏襲したものでした。「謎解き」が好きな若い人にもリーチしていたともいえるでしょう。
5:『ミンナのウタ』(2023年)
こちらの監督は『呪怨』で知られる清水崇。その清水監督の『犬鳴村』『樹海村』『牛首村』の「村ホラー」3作はヒットしたものの評価はあまり芳しくなく、同2023年公開の『忌怪島/きかいじま』はさらに厳しい評価が寄せられましたが、この『ミンナのウタ』はホラーを見慣れている人からも「本気で怖い!」という悲鳴と高評価が相次ぎました。最大の特徴は「GENERATIONS from EXILE TRIBE」のメンバーが本人役で登場していること。謎の古いカセットテープと少女の声が不可解でじわじわと不安を加速させてくれますし、予想外の事態の先にあった、あの「明るい玄関先」でのシーンは本気で絶叫するほどの恐ろしさでした。実質的に主人公である探偵役のマキタスポーツが、なんだかかわいいのも注目ポイントです。
6:『みなに幸あれ』(2024年)
一般公募フィルムコンペティション「第1回日本ホラー映画大賞」で大賞を受賞した同名短編を元に長編映画として完成させた作品で、前述した『ミンナのウタ』の清水崇が総合プロデュースを手掛けています。公開規模は極めて小さかったのですが、本作で下津優太監督は長編商業映画デビューとなり、その試みそのものを応援したくなります。R15+指定納得の気持ちの悪い描写はいい意味でトラウマ級。「恐怖と笑いが紙一重」なシーンの数々は大いに賛否両論を呼んでいます。田舎に行ったら「おじいちゃんとおばあちゃんがなんだかおかしい」という立ち上がりから、多くの人が一度は考える「幸せ」の残酷性を突き詰める過程は、なんてイヤなことを考えるんだと感心できました(褒めています)。
7:『毒娘』(2024年4月5日より劇場公開)
2011年にインターネットの匿名掲示板で話題となった、ある新婚家族の出来事をモチーフとしつつ、オリジナル脚本で作り上げた内容です。物語は10代の女の子と継母の関係を軸にして、謎の少女「ちーちゃん」との壮絶な争いを描くというものなのですが……その先に「なるほど、そうきたか!」と驚ける展開が用意されていました。描かれる恐怖の本質は決して超常的なものではなく、家族であれば少なからず「思い当たる」もの。R15+指定で刺激の強い殺傷描写はありますが、それ以外では親しみやすく共感もしやすい内容で、中高生ごろのお子さんをお持ちの人、あるいはパートナーに不満がある人であれば、より「自分ごと」として考えられることはあるでしょう。
何より、本作は『変な家』と同じように(高校生以上の)若い人にも届いてほしいです。劇中では思春期にある暗い感情を攻撃に変え、誰かを傷つけてしまう「間違った選択」の悲哀と恐怖も描かれているので、反面教師的に学べることはきっとあるはずですから。クライマックスのとある場面では思わず涙してしまいましたし、それは内藤瑛亮監督の過去作『ミスミソウ』や『許された子どもたち』にも通ずる要素でした。
夏公開の『サユリ』にも大期待!
さらに、発表されたばかりの大期待作は、2024年夏公開の『サユリ』。マイホームを手にした家族に降りかかる恐怖を描いた、全2巻の名作ホラー漫画が原作。くしくも、こちらも『事故物件 恐い間取り』『変な家』『毒娘』と同様の「家ホラー」といえるでしょう。監督は白石晃士。映画では『ノロイ』『カルト』『貞子vs伽椰子』などが支持を集めており、2022年の『オカルトの森へようこそ THE MOVIE』、2023年の『戦慄怪奇ワールド コワすぎ!』も、特にそのエンターテインメント性の高さがホラーファンから称賛されていました。
その白石晃士監督は、「原作を一読し、これを映画化するのは絶対自分!と、プロデューサーと共に企画を進めてはや5年。ついに映画化へこぎつけた入魂の娯楽ホラー映画です。停滞しているJホラーをブチ壊す、新時代のホラーを目指しました」と、さらなる期待が高まるコメントも寄せています。
まずは、やはり『毒娘』を劇場で見てみて、日本のホラー映画のこれからの可能性や希望を、感じてみてほしいです。
この記事の筆者:ヒナタカ プロフィール
All About 映画ガイド。雑食系映画ライターとして「ねとらぼ」「CINEMAS+」「女子SPA!」など複数のメディアで執筆中。作品の解説や考察、特定のジャンルのまとめ記事を担当。2022年「All About Red Ball Award」のNEWS部門を受賞。