映画としては明らかな難点も
筆者個人としての映画『変な家』の感想は、「映画をあまり見ないライト層を楽しませるためのサービス精神はいいし、嫌いではないけれど、特に物語部分で雑な部分が目立つため、もう少しちゃんと作り込んでほしかった」というのが正直なところです。中でも気になるのは、前半と後半それぞれの雰囲気に「ギャップ」を感じる上、特に後半では「唐突さ」も否めないこと。『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎』も連想する後半の舞台そのものは面白いですし、『悪魔のいけにえ』と『シャイニング』のパロディと思しきシーンには笑ってしまいましたが、ホラーとしての演出と話運びがチープだと感じてしまう人も多いでしょう。
ツッコミどころも満載で、特に終盤のある人物の行動に「ベラベラとしゃべっていないでさっさと⚪︎⚪︎しろよ」と思ってしまった人も多いのではないでしょうか。「ワッ」と大きな音で驚かせる、いわゆる「ジャンプスケア」の多用も、若い人がお化け屋敷的に楽しむぶんにはいいですが、安易な手法に思えてしまう大人も少なくはないはずです。
いいところもあるし、劇場に若者が集まっていることを素直に喜びたい
とはいえ、映画『変な家』の前半の「おかしな間取り」からその背景を推理するミステリーは、なるほど(原作の動画から)若者から支持を得ることも納得の面白さでした。さらに、間宮祥太朗や佐藤二朗、川栄李奈ら役者陣の好演、その間取りそのままの場所を探訪できるロケーションの見事さ、「主観視点」で見せる場面がしっかり怖い演出になっているなど、いいところも多くあります。
原作の動画は1人称での語り口と対話が大きな特徴で、そもそも映画化に向かない題材ともいえるのですが、だからこそ(よくも悪くも前半とのギャップを感じるし唐突さもある)後半も「見た目にも怖くて楽しいホラー映画へと転換する」作り手からのサービスだとも思えます。欠点は認めつつ、シンプルに「怖かった」「面白かった」と褒める感想が多い理由も、そこにあるのでしょう。
そして、映画ファンの1人としては、『リング』『呪怨』などが世界的に評価された「日本のホラー映画」というジャンルにおいて、新たな大ヒット作が生まれたことを素直に喜びたいです。
この『変な家』で、ほかの観客の悲鳴も聞こえる劇場の環境でホラー映画を見るという「体験」を若者に提供してくれたこともうれしいですし、ほかの映画にも興味を持つきっかけになるでしょう。
さて、ここからは2022年以降に公開された、最近の日本のホラー映画を7作品挙げて、その特徴や魅力をまとめてみましょう。
中には世間的な評価が高くないものもありますが、コンセプトそのものが斬新だったり、これまでと違ったアプローチがされるなど、これからの日本のホラー映画のために新たな可能性を探り、そして発見しつつある段階にあると思えたのです。
中でも、これから公開される7作目はすでに名作といっていいほどの出来栄えですし、劇場で見る機会を逃さないでほしいです。