2024年の人気動向その1. 国際系・探究重視
ここからは今年受験生を増やした学校の中からいくつかピックアップして、人気の理由を探ってみたいと思います。まずここ数年の傾向として国際系と言われる学校に受験生が集まっています。国際系とは、単に英語教育が充実しているということだけではなく、グローバルな視点で物事を見て考える力を養う教育をうたっている学校です。
特徴としては、英語で授業が行われていたり、留学制度が充実していたり、海外大学進学への道が開かれていたり、国際バカロレア教育を行っていたり、インターナショナルスクールを併設していたり……、取り組みはさまざまです。
国際系の学校は、その多くが生徒募集が困難になっていた伝統女子校を共学化し、校名を変更し、時流を先取りした教育を行う学校に生まれ変わって人気校となるというパターン。広尾学園は、そのはしりですが、インターナショナルコースの他に医進サイエンスコースもあり、今では御三家に合格していても、広尾学園に合格したらこちらを選択するという例も出るくらいになっています。
2021年に開校した広尾学園小石川は、教員が広尾学園から移動し、そのノウハウを生かす教育を行うということから、初年度から受験者が殺到しました。3年目は落ち着いてきた印象ですが、すでに難関校の仲間入りをしています。どちらも都心の一等地にあり、恵まれた環境と決め細かい指導が、難関大学進学を志向する教育熱心な層に受けているのです。
三田国際学園も同じような経緯を踏んで開校した学校ですが、今はインターナショナルを全てのコースの前提におき、英語による授業や留学制度の充実など、3校の中では最もグローバル教育に重きを置いている学校です。
以前、大橋清貫校長にインタビューをした際、「当初は有名大学に進学させることが生徒のためと思っていたが、今は社会で活躍するための根幹となる力を育てるのが、中等教育の役割だと考えるようになった」という言葉が印象的でした。こちらも偏差値は広尾学園小石川と同じくらいで、なかなかの難関校になっていますが、英語入試や、算数と理科だけの入試もあるので、いずれかが得意なお子さんにはチャンスがあります。
母体を同じくするカトリック校から共学化したサレジアン国際学園とサレジアン国際学園世田谷は、初年度から受験者を集めており、2024年も人気でした。別学→共学化→国際系学校への転身は、これからの時代を見据えて私学を選びたいと考える保護者のニーズを捉えた動きと言えるでしょう。
国際系とはうたっていませんが、探究教育にも力を入れ、思考力を育むさまざまな環境を整えて、グローバルな視野とマインド、スキルを育成しようとしている学校は他にもあります。
帰国生も多く、グローバル教育と探究教育を重視するかえつ有明はその1つ。高校には探究に振り切った高校新クラスもあり、探究教育の実践を積み重ねている学校として人気です。こちらは一般入試の他に、思考力入試、AL(アクティブラーニング)思考力入試など新タイプ入試も実施していて、多面的な力を持った生徒を集めようという意思が感じられます。
また、元麹町中学校で教育改革を行った工藤勇一氏が校長を務める横浜創英や自由教育の流れをくむドルトン東京学園は、出口を大学進学だけにおかず、変化する社会を見据え、主体的に生きる力を育む教育を行う学校として注目を集めています。
この3校は、新しい教育を試行している学校で、今の大学進学をゴールにした中等教育に疑問を持つ層から支持されており、これからの動向が注目されます。
2024年の人気動向その2. 理系進学・中堅別学校
一方、芝浦工業大学附属、東京電機大学、東京都市大学付属は、理系進学に強い学校として受験生を増やしています。理系の勉強が好きというお子さんなら、実験室の設備やその使われ方、デジタルトランスフォーメーション(DX)に関する姿勢なども注目するといいでしょう。一方、別学の伝統校の中にも受験生を集めた学校があります。偏差値的にも中堅と言われる学校群の中では、女子校の普連土学園、三輪田学園、山脇学園、実践女子学園、男子校では佼成学園、足立学園などが受験生を集めました。
これらの学校は、共学校人気に押された時期もありましたが、その後学校改革を進めたり、入試回数を増やしたり、高大連携を図ったり、きめ細かい指導を行ったりと、さまざまな工夫を地道に重ねてきた結果、認知が高まり受験生を集めている印象です。
ダイバーシティやジェンダーの流れの中で、別学教育の意味を問う声もありますが、思春期に異性を気にせず自分を表現できる環境はある意味貴重です。別学を選べるのは、中学入試の大きな特徴でもあるので、共学と決めている人も、一度ご覧になってはいかがでしょう。