福地桃子が可憐に“千尋”デビュー! 日英同時上演の舞台『千と千尋の神隠し』は歴史的快挙

2022年に舞台化された宮﨑駿監督の『千と千尋の神隠し』が、2024年は日英で同時上演。海外で4カ月もの間、日本のプロダクションが日本語で公演を行うのはほぼ類を見ない快挙です。話題の舞台を、今回千尋役デビューした福地桃子さんの主演回を通してリポート!

観客のイマジネーションを刺激する、見どころ満載の舞台 

 そんな中で開幕した、2024年版の『千と千尋の神隠し』。

静寂の中、青空と地平線が映し出された幕に向かって、花束を握りしめた千尋がとぼとぼと歩いてくる姿から、物語は始まります。車で引っ越し先に向かう途中、森の中に迷い込んだ一家は、不思議なトンネルを発見。興味津々の両親にしぶしぶ続いて、千尋が中へと入っていくと……。

ここで幕が上がり、盆舞台が回って“異世界”があらわれます。 

千と千尋の神隠し
舞台『千と千尋の神隠し』写真提供:東宝演劇部

盆の上の舞台装置は、面が変わるたびに屋台になったり、神々のための湯屋「油屋」の表玄関になったり。原作映画の世界をリアルに再現しつつも、100%作り込むのではなく、あえて観客の想像に委ねた部分もあり、かつて『レ・ミゼラブル』で“盆舞台+イマジネーション”を駆使し、一世を風靡(ふうび)したケアード氏らしい演出です。 

千と千尋の神隠し
舞台『千と千尋の神隠し』写真提供:東宝演劇部

不思議な世界にひしめくのは、個性豊かなキャラクターたち。2年前の舞台『イントゥ・ザ・ウッズ』では“赤ずきんちゃん”を演じていた羽野晶紀さんは、今回驚きの“おばあちゃん声”を駆使し、湯婆婆を怪演(夏木マリさん、朴璐美さん、春風ひとみさんと交互出演)。

千と千尋の神隠し
舞台『千と千尋の神隠し』写真提供:東宝演劇部

新キャストとしてハクを演じる増子敦貴さん(GENIC)は、シャープな動きでキャラクターの神秘性を印象づけます(醍醐虎汰朗さん、三浦宏規さんとの交互出演)。謎めいた存在として人気のキャラクター・カオナシは、中川賢さんがコンテンポラリー・ダンスの要素を取り入れた動きで体現(森山開次さん、小㞍健太さん、山野光さんとの交互出演)。台詞のほとんどない役柄に一層の奥行きが加わっています。 

千と千尋の神隠し
舞台『千と千尋の神隠し』写真提供:東宝演劇部

アンサンブルキャストの、八面六臂(ろっぴ)の活躍も見逃せません。神様や油屋のスタッフとして登場したかと思えば、道を照らすカンテラとしてユーモラスかつ美しいダンスを見せたり、黒衣としてパペットを自在に操ったり。特に数人がかりで滑らかに操る白竜は、トビー・オリエ氏の精緻なデザインもあいまって、まさに命が吹き込まれたよう。オクサレ様の体に刺さったあるモノを、千尋と皆が引き抜くくだりもエネルギーにあふれ、見どころの1つとなっています。

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新キャストは福地桃子さん!
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