映画.comで4.2点、Filmarksでは4.1点(1月23日時点)など映画レビューサイトでの平均点ももちろん高く、SNSでは普段は辛口な映画ファンからも、熱心な原作ファンからも興奮の声が続々と寄せられています。公開3日間で観客動員数35万人、興行収入5.3億円を突破しており、この口コミの盛り上がりからすれば、さらなる大ヒットも期待できるでしょう。
「漫画の実写映画化」というジャンルにおける1つの到達点
本作は、エンターテインメント性がすこぶる高いため、原作を知らなくても全く問題なく楽しめる、万人向けの内容でもあります。PG12指定ならではの残酷なシーンもわずかにありますが、それも原作からあったエグさから逃げず、暴力の恐ろしさを示すために重要なものでした。筆者個人としても、この実写映画版『ゴールデンカムイ』は、原作ファンから特にバッシングや酷評を受けがちであった「漫画の実写映画化」というジャンルにおける1つの到達点であり、キャストとスタッフが「ここまでやり切った」からこその完成度と面白さを誇る、素晴らしい作品だったと思います。その理由を、記していきましょう。
また、これから見る人には、エンドロール中・後にもおまけがあるので、最後まで席に座っておくことを、強くおすすめします。
主人公・杉元の「優しさ」を体現する山崎賢人の瞳
まずはキャスティング、俳優陣の熱演から語らねばなりません。俳優それぞれが原作ファンから「本物がそこにいる」「完璧な再現度」と褒められているのが驚異的で、全員をそれぞれ褒めちぎりたいほどですが、ここでは山崎賢人(崎はたつさき)、山田杏奈、そして玉木宏という3人に絞って紹介しましょう。主演の山崎賢人は、キャストの発表時に否定的な声も見かけました。『キングダム』や『ジョジョの奇妙な冒険 ダイヤモンドは砕けない 第一章』 など、ほかの漫画の実写映画化でも主演を務めており、原作のイメージとはやや異なることもあって、「長瀬智也の方が適役だったのでは」「さすがに山崎賢人に頼りすぎ」などの意見もあったのです。
しかし、実際の映画本編での山崎賢人は、その澄んだ瞳もあって、原作の主人公・杉元というキャラクターの根幹を成すと言っても過言ではない「優しさ」を存分に体現していました。バディとなる年下の少女・アシリパ(リは本来小文字)を「さん」付けで呼ぶ様からも、他者をリスペクトする人間性が見て取れます。
風呂屋では鍛え上げた肉体とともに「戦争の傷跡」も見せ、「命の取り合い」と言うべきバトルシーンの数々からは狂気を感じさせ、戦争で人を殺してきた罪深さを自虐的に語る場面もあります。それでも、観客は彼の内面にある善性を心から信じられる、だからこそ心から応援したくなるのは、山崎賢人その人が演じたからこそのものでしょう。
ちなみに、山崎賢人が脱獄囚の1人・白石を演じた矢本悠馬(こちらも軽薄なのに憎めないキャラクターの印象がそのままですごい!)と共に極寒の川に飛び込むシーンは吹き替えなしだったそう。劇中の寒すぎての「震え」は本物でもあるのです。