ヒナタカの雑食系映画論 第66回

実写映画版『ゴールデンカムイ』絶賛の嵐となった理由を全力解説! 山崎賢人ら俳優陣の熱演が素晴らしい

実写映画版『ゴールデンカムイ』が絶賛の嵐となっています。なぜここまでの完成度のエンターテインメントとなったのか、その理由を解説していきましょう。(※サムネイル画像は筆者撮影)

原作に忠実、しかし「時間の流れを操作できない」映画ならではの工夫も

『キングダム』シリーズのほか、『GANTZ:O』や『累-かさね-』でも漫画の映画化作品を手掛けてきた、黒岩勉による脚本も素晴らしいものでした。基本的には原作の序盤を忠実に再現しながらも、脱獄囚・白石の登場シーンを少しだけ原作から「ズラす」ことなどで、よりタイトにまとめる工夫が見て取れました。
 

また、原作ではたびたび回想シーンが入り、主人公・杉元の根本的な行動理由が示されています。漫画では回想が多く挟まれても自分のペースで読めますが、「時間の流れを能動的に操作できない」映画でそのままやってしまうと、煩わしく感じてしまう可能性もあったでしょう。しかし、映画ではそれを「謎」として伏線を張ってからの、これ以上のないタイミングと理由を持って明かすことで、1本の映画としてのカタルシスを作り出していたのです。

それでも残る不満点は「まだ序章」であること、それでも……

ここまで絶賛ポイントを多く挙げてきましたが、それでもあえて不満を挙げるとすれば、衣装が明るくきれいすぎると感じさせる場面があったことと、やはり物語が「序章」といえるところで終わってしまうところでしょうか。

しかし、前者は初めの203高地での戦闘から衣服を容赦なく汚してもいますし、そのほかの美術、セット、小道具、「荒れた肌」感もあるメイクの作り込みのおかげもあってか、コスプレ感はあまり目立ちません。後者も、前述した脚本の工夫もあって、この1本だけでも最低限の「区切り」をつけています。何より、「いいから! もう! 早く続きが見たい!」と思わせることも、本作のすごさを物語っているのではないでしょうか。

2012年の『るろうに剣心』、2016年の『ちはやふる -上の句-』など、過去の漫画の実写映画化作品にあった悪評を覆す、原作のリスペクトにあふれ、なおかつ実写ならではの魅力を突き詰めた作品はこれまでも世に送り出されました。その先にあった、実写映画の完成形が、やはりこの『ゴールデンカムイ』だと断言します。多くの人が、劇場でご覧になることを、何よりも望んでいます。

『カラオケ行こ!』も実写化大成功

この『ゴールデンカムイ』に感動した人は、同様に人気漫画を実写映画化した、現在上映中の『カラオケ行こ!』もおすすめします。
 

こちらは「ヤクザと中学生の青春劇」という危うさの中にある、歳の離れた2人の関係性の尊さにあふれた作品。綾野剛のキュートさ、新星・齋藤潤の利発さを見ているだけで楽しく、クスクス笑えるコメディが好きな人に大推薦できます。そして、生身の人間が歌ってこその感動は、実写映画ならではでしょう。

原作を大切にしつつ、合唱部のエピソードやビデオテープといった、映画オリジナルの設定が生きる野木亜紀子の脚本の工夫も見事。『ゴールデンカムイ』とはまた異なる方向性での(それでいて原作の再現度の高さや「刺青を入れられる」共通点もある)実写化大成功ぶりを、ぜひスクリーンで目撃してください。

この記事の筆者:ヒナタカ プロフィール
All About 映画ガイド。雑食系映画ライターとして「ねとらぼ」「CINEMAS+」「女子SPA!」など複数のメディアで執筆中。作品の解説や考察、特定のジャンルのまとめ記事を担当。2022年「All About Red Ball Award」のNEWS部門を受賞。
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