海外のアニメ映画は、やはりディズニーおよびピクサー作品が子どもから大人まで大人気。しかし、それ以外でも優れた海外アニメ映画はたくさんあります。「これだけは見てほしい!」と心から思える傑作を、2023年公開&配信作品から7つ厳選して紹介します。
1:『ペルリンプスと秘密の森』(2023年12月1日より劇場公開中)
ブラジル製のアニメ映画で、『父を探して』(2013年)が第88回アカデミー賞長編アニメーション賞にノミネートされたアレ・アブレウ監督の最新作です。描かれるのは、テクノロジーを駆使する太陽の王国と、自然との結びつきを大切にする月の王国、それぞれの国の秘密エージェントが、巨人による破壊から魔法の森を救うため、「ペルリンプス」という謎の存在を見つけようとする物語です。 意地っ張りだけど利発な2人の主人公の愛らしさを眺めているだけでも楽しめますし、「はじめはいがみあっていたけど同じく目的のために手を組む」正統派の「バディもの」にもなっています。異なる場所に住む者たちの関係性、そして自然や動物が大きくフィーチャーされていることから、あの『もののけ姫』(1997年)や、アイルランド・ルクセンブルク合作のアニメ映画『ウルフウォーカー』(2020年・Apple TV+で配信中)を連想する人もいるはずです。 何よりの魅力は、美しい色彩の映像と幻想的な音楽。スクリーンで「浸る」ことで何倍にも感動が膨らむでしょう。隠されていた「秘密」が明かされる驚きは何ものにも変え難いものですし、そこから浮かび上がるテーマ性はとても深く、現代ではより胸に迫るものでした。見る人によって解釈が異なるラストまで、ぜひ見届けてほしいです。2:『ニモーナ』(Netflixで見放題配信中)
同名グラフィックノベルを原作とした作品で、殺人の濡れ衣を着せられた騎士が、動物に変身する能力を持つ少女と相棒となり、陰謀へ立ち向かうファンタジーアドベンチャーです。衣装や建築物は中世を思わせながらも、科学技術が発展しSNSも存在する現代社会がハイブリッドされた世界観が斬新。ダイナミックなカメラワークで展開する、バラエティ豊かなアクションをたっぷり楽しめるでしょう。そして、LGBTQ+のメインキャラクターが登場し、悪しき慣習や偏見を覆すために奮闘する、現代に見られる(作られる)意義のある寓話(ぐうわ)にもなっています。ヒロインの勝ち気を通り越して傍若無人な活躍が痛快無比であるからこそ、彼女のつらい過去に胸を締めつけられるでしょう。悲劇を乗り越え、世界が変われることを明確に示した傑作です。