人間vs.鬼の死闘は、まさに“呼吸”“全集中”がカギ
そして『鬼滅の刃』最大の見どころと言えるのが、人間vs.鬼たちの死闘。漫画やアニメの世界では自由自在に空間を駆け回りながら展開していた闘いを、舞台上で生身の人間たちがどう表現するのか、阪本さん自身、興味津々だったそうです。「漫画だと、どのページを見ても“これ、人間じゃ表現不可能でしょ?”という動きばかりじゃないですか。舞台版を観たことのない方からすれば“いったいどうするんだろう”と思われるかと思うのですが、一言で言えば、カンパニーが一丸となって、演劇的に表現しています。
つなげてみればあっという間ですが、稽古では動きの1つひとつが、まるで針の穴に糸を通すような繊細さで組み立てられています。1つずれると総崩れになってしまうので、緊張感は半端ないですね。まさに“呼吸”が大事で、いかに“全集中”しながら、みんなで呼吸を合わせるかがカギなんです。皆さん、これまでに味わったことのないようなスリルの中で観ていただけるんじゃないかな。
これまで、殺陣の経験はありましたが、強い役が多かったこともあって、(相手から)まともにくらうことはありませんでした。でも炭治郎はめちゃくちゃ(鬼との闘いの中で)吹き飛ばされるので、今回、“受け”を学ばせていただけて、とても面白いです。殺陣師の方によると、斬るよりもむしろ受けるほうが難しいそうで、どこが斬られてどういう衝撃を受けたのか、相手がどれくらいのつわものなのかを、受けをしながら表現しなくてはいけないそうです。ある種、パントマイムの要素もあって、勉強になりますね。
『鬼滅の刃』に導いてくれた(!?)、“呼吸”の鍛錬
以前から重ねてきたという“呼吸”の鍛錬も、大いに役だっているようです。「肺の筋肉、呼吸筋を鍛えるトレーニングをしてきたのが、長時間肺を使うのに役立っています。器具を使いながら、横隔膜を下げる筋肉を鍛えるというもので、おかげで呼吸が長続きするという実感があります。
呼吸って、歌にも直結してくるんですよ。歌詞をきちんと聴き取っていただけるよう、そしてマイクにきちんと声が乗るよう、インナーマッスルを使って、息をコントロールすることを意識しています」 (舞台『鬼滅の刃』「残酷謡」キャスト歌唱動画)
柔らかな口調の中に、全てはより良いパフォーマンスを届けるために、という強い決意がにじむ阪本さん。
「目指すのは、うそのない表現者です。表面だけそれらしく見せても、人の心は動かせないと思うので、自分のリアリティーを大事にして、それをせりふや歌に落とし込みながら、しっかりと役や、作品を届けていきたいですね。そのためにも、まだまだいろんな経験を重ねて、自分の引き出しを増やしていきたいです」