炭治郎と自分が重なった瞬間
原作漫画を読んでいて特に印象に残ったのは、まだ鬼殺隊に入る前のシーン。家族を殺され、鬼殺隊を志した炭治郎が鱗滝(うろこだき)のもとで修業し、最後に巨大な岩を斬るという課題に取り組むくだりだそうです。「刀で岩を斬ることなんて、絶対にできないと思うじゃないですか。でも(どこからともなく現れた少年)錆兎(さびと)に鍛えられて、遂に彼に勝った瞬間、岩が斬れている……という描写に感動しました。(実は)鬼殺隊を志し、励んでいた錆兎が、炭治郎に思いを託そうとしたという背景にもグッときましたし、ちょうどそのころ、僕自身も新しい環境に身を置いていまして。
僕は一時期、音楽に集中していたのですが、舞台のお仕事を再開したことで、ダンスにお芝居に殺陣にと、身に着けるべきことがいっぱいあったんです。改めて、舞台という世界で頑張ろうとがむしゃらにやっていた自分と炭治郎が重なりました。彼の努力が報われる姿を見て、僕自身、こういう景色が見たい、と思ったのかもしれません」
「作品によっては、この人物はなぜこういうせりふを言うんだろう、と悩む時もあるのですが、炭治郎に関しては、家族が受けた仕打ちと(鬼になってしまった)妹に対する思いが原点にあるのが分かります。
また僕自身、きょうだいもいますし、スケジュールが合えば家族旅行に行くくらい今も仲がいいので、もしその家族にあんなことが起こったとしたら、絶対僕も炭治郎のような気持になると想像できるし、自分のバックボーンから湧き上がってくる感情と結びつけて演じることができます。
人の気持ち、人の心の痛みが分かるから、(彼を見出した“柱”の)冨岡さんや、鱗滝さんたちに“考えが甘い”と叱られても、倒した敵さえ思いやってしまうのも、炭治郎のすごいところですね。彼の優しさ、そして“必ず(妹の)禰󠄀豆子を人間に戻すんだ”という強い思いを根っこに持って、大切に演じたいです」