線路跡を利用した専用道を走る
添田を出て16分で彦山に到着。ここは駅があったところで、バスはいよいよ専用道に乗り入れる。日田彦山線の線路跡を舗装した道路を走るのだ。もとは単線の線路なので幅は狭く、バスやクルマのすれ違いはできない。それで、行く手には遮断機が下りている。踏切は、普通はクルマが線路に進入できないように遮断機が下りているものだが、ここでは逆に列車の代わりのバスがすぐには通れないようにしている。
遮断機が上がるとバスは専用道に進入。一般の車が誤って侵入できないように、バスが発車すると遮断機が下りて通行できなくする。安全対策なのだ。 短いトンネルを抜けると続いて長大な釈迦岳トンネルに入る。全長4379メートルは、長崎本線の長崎トンネルに続くJR九州の在来線では2番目の長さ。長崎トンネルが貫通したのは1972年のことなので、それまでは九州で1番長い鉄道トンネルとして知られていた(現在では、九州新幹線および西九州新幹線が開通して釈迦岳トンネルよりも長いものは10以上ある)。
長いにもかかわらず、アップダウンが少なく、ほぼ直線なので、出口が小さく見えると運転手さんがアナウンスしてくれる。トンネル内には照明があり、下部の緑のライトはトンネル中間部で色を変えているとの説明もあった。 釈迦岳トンネルを抜けると、次のハイライトは3つあるアーチ橋だ。といっても車内から見ることはできない。かつては日田彦山線の走行写真によく使われたシンボル的スポットだった。そこをカラフルで小型のバスが走り抜ける。何ともかわいらしい姿だ。アーチ橋からは、沿線の棚田風景が見渡せる。この車窓は列車時代と変わっていないようだ。 大行司駅、続いてかつての駅舎をそのまま利用した宝珠山駅に停車すると、ここから先は再び一般道を走る。また、この駅は福岡県と大分県の県境にまたがる駅として知られ、そのことは駅舎にもはっきりと記されている。
福岡県から大分県へ
大分県に入ると、バスは穏やかな山並みに囲まれた田園風景の中をのんびりと走っていく。相変わらず小さな停留所は利用者がないので通過だ。今山駅は国道から離れたところにあるので、バスは国道から脇道にそれ、大肥川を渡って旧今山駅の前で停車する。使われなくなったホームと線路が物悲しい。バスは再び大肥川を渡って国道に戻り、先を急ぐ。鉄橋が見えてきた。特急「ゆふいんの森」などが走る久大本線だ。その下をくぐり、線路に並行して進むと夜明駅の脇に停車する。かつて、日田彦山線の列車は、全て夜明駅から日田駅まで乗り入れていた。BRTもそれに倣い夜明駅が終点ではなく、久大本線に並行した道路を走り日田へと向かう。
結局、添田駅からおよそ1時間半かかって日田駅前に到着した。ほぼ定時だったが、かつての列車なら各駅停車でも1時間前後で走破していただけにスピードダウンは免れない。