ヒナタカの雑食系映画論 第51回

映画『翔んで埼玉』続編はなぜこんなに笑えるのか。埼玉県民、滋賀県民の熱狂を生んだ「発明」とは

公開初日から(埼玉県と滋賀県で)社会現象級の盛り上がりを見せた『翔んで埼玉 ~琵琶湖より愛をこめて~』。ここまで笑えて、そして感動できる理由は、前作の「発明」にあり、今回はそれを踏襲しつつパワーアップをしていたのです。※サムネイル画像出典:(C)2023 映画「翔んで埼玉」製作委員会

争いの“滑稽さ”を描く、2つの史実を元にした映画が公開

『翔んで埼玉 ~琵琶湖より愛をこめて~』で描かれるのは前作にも増して世にもバカバカしい争いごとですが、だからこそ現実のもめ事もまた滑稽なのでは? とも思えます。そのことをさらに感じられる、劇場公開される映画2作を最後に紹介しておきましょう。

11月23日より公開中の『首』は「本能寺の変」を中心に据えた武将たちのパワーゲームが描かれる戦国絵巻ですが、そのジャンルは間違いなくブラックコメディー。有名なエピソードをもはやショートコントのように描いている場面もありますし、R15+納得の残酷描写も争いごとの無常さや滑稽さをむしろ際立たせています。
 
12月1日公開の『ナポレオン』は、表向きには英雄であるはずのナポレオンの、「情けなっ!」と思うばかりの滑稽さや哀れさを強く描いた歴史大作。同じくリドリー・スコット監督作である『最後の決闘裁判』に近い、女性をモノのように扱う男社会へ痛烈な批判が込められた内容にもなっていました。
 
『首』も『ナポレオン』も史実を元にした映画でありながらも、完全なフィクションかつ絵面もバカバカしい『翔んで埼玉 ~琵琶湖より愛をこめて~』に通ずるところがあるというのは……なんとも複雑な気持ちになりますが、それは現実の争いごとの恐ろしさと表裏の滑稽さを鋭く描いているということでもあるとも思うのです。ぜひ、併せて見てみてください。

この記事の筆者:ヒナタカ プロフィール
All About 映画ガイド。雑食系映画ライターとして「ねとらぼ」「CINEMAS+」「女子SPA!」など複数のメディアで執筆中。作品の解説や考察、特定のジャンルのまとめ記事を担当。2022年「All About Red Ball Award」のNEWS部門を受賞。
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