1:『スラムドッグス』(11月17日劇場公開)
犬が仲間と共に旅をするロードムービーであり、PG12指定(12歳未満には保護者の助言・指導が必要)止まりなので子どもも見ることも可能なのですが……そのレーティングでもギリギリと思われる下ネタが全開! しかも旅の目的はクズな飼い主への復讐(ふくしゅう)! それでも振る舞いが愛らしいワンちゃんたちと、エグめのギャグとのギャップを楽しめるでしょう。 主人公が物語の冒頭では「飼い主は自分を大切にしていると信じていた」ことも重要です。ある種の「毒親」、または固執していた価値観からの解放の物語としても読み取れる、意外な志の高さと真っ当な教訓も備えているのです。日本語吹き替えのクオリティが最高で、特に個性豊かな4匹のワンちゃんたちにハマりまくった、ロバート・秋山竜次、マギー、森久保祥太郎、津田健次郎の掛け合いにはたまらないものがあります。とある有名な犬映画の、いい意味で悪意全開なパロディーにも注目です。2:『首』(11月23日劇場公開)
構想に30年を費やした大作で、「どいつもこいつも狂ってやがる。」というキャッチコピー通り、まったく穏当な内容ではありません。首が次々に吹っ飛んで鮮血を撒き散らし、加瀬亮演じる織田信長が暴虐の限りを尽くすバイオレンス描写はさすがはR15+指定!「この超豪華キャストでこんなことを!?」という意外性も楽しめます。同じく北野武監督作『アウトレイジ』のヤクザたちの「揉め事」の面白さを、有名な戦国武将に置き換えているともいえるでしょう。クセ強すぎなキャラクターたちが天下統一という価値観に躍起になる様はどこかむなしく滑稽でもあり、その「諦観」を感じさせることが北野武監督の作家性の1つです。羽柴秀吉(豊臣秀吉)の有名な「草履を懐に入れて温めていた」エピソードもギャグへと昇華されていて、やはりブラックコメディーとしての側面が強い作品といえます。