アスリートの育て方 第5回

文武両道だからこそ意味がある。元Jリーガーで東大サッカー部前監督、林陵平の「考える力」を育んだ両親

アスリートが「どう育てられたのか」「どう子どもを育てているのか」について聞く連載【アスリートの育て方】。幼少期から文武両道。最近まで東大サッカー部の監督を務めた明大卒のJリーガー・林陵平がどのような家庭で育ったのか、話を聞いた。

サッカーと勉強、どちらか1つなら誰でもできる

「勉強をしろと言われたこともほとんどないんですが、誰に言われずとも真面目にやっていましたね。中学・高校時代はどんなにサッカーの練習で疲れていても、授業中に寝ることなんてなかったし、むしろ1番前の席に座って授業を聞くタイプでした。結構成績も良かったんですよ。サッカーと勉強、どちらか1つだけやるなんて誰にでもできるし、文武両道じゃないと意味がないと思っていたので。だから、自由奔放なイメージのあるヴェルディのユース育ちらしくないって、よく言われます(笑)」

真面目で1つのことを突き詰める性格は、父譲りだろうか。小中学生の頃は選手名鑑を熟読しては、サッカー選手の名前を覚えるのに夢中だった。
 
「最初に好きになったのは、ジネディーヌ・ジダン、ルイス・フィーゴ、デイビッド・ベッカムらがいて“銀河系集団”と呼ばれていた頃のレアル・マドリードですが、特定のチームや選手というよりも、いろんなサッカー選手の名前を覚えたかった。研究熱心というか、オタク気質ですね(笑)。記憶に残っている最初のワールドカップは1998年のフランス大会。でもその4年前のアメリカ大会のビデオも、小学生ながら擦り切れるほど観ましたね」
 
解説者として活躍する現在の素地も、もしかするとこの頃に育まれたのかもしれない。

いつも家族皆と一緒にいたから、道を逸れたことは1度もない

高校卒業後は、ヴェルディユースのコーチが兼任で指導にあたっていた明治大学のサッカー部へ。この進路も、もちろん林自身が決めた。大学時代は寮生活だったが、オフになれば実家に帰り、母とはよく日帰り温泉にも出かけたという。
 
「母とはなんでもしゃべれる間柄でしたし、母だけでなく、幼い頃からいつも家族皆と一緒にいたっていうイメージが強いですね。だから道を逸れることも1度もなかった。兄もとにかく優しい人で、今でも家族LINEで毎日のように4人で連絡を取り合っているんです」
林凌平さん
お兄さんは「とにかく優しい人」と林さん(写真:林陵平さん提供)
そして林は、照れる素振りも見せずにこう言い切る。
 
「サッカー選手として、これまでお世話になった監督、コーチの皆さんは全て僕の恩師ですが、それでも人生の1番の恩師はやっぱり両親。大好きだし、すごく尊敬もしている。2人がいなければ、今の自分はないと思っています」


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東大サッカー部の監督を約3年務めて林陵平が感じたこと。指導と子育ての共通点とは?


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林 陵平 プロフィール
1986年9月8日生まれ、東京都八王子市出身。ヴェルディ・アカデミー、明治大学を経て2009年に東京ヴェルディとプロ契約。柏レイソル、モンテディオ山形、水戸ホーリーホック、東京ヴェルディ、町田ゼルビア、ザスパクサツ群馬で大型ストライカーとして活躍し、2020年シーズンを最後に現役を退いた。引退後は解説者に。2021年1月から約3年間、東京大学ア式蹴球部を監督として指導し、2023年10月9日をもって退任した。


吉田 治良 プロフィール
1967年生まれ。法政大学を卒業後、ファッション誌の編集者を経て、『サッカーダイジェスト』編集部へ。2000年から約10年にわたって『ワールドサッカーダイジェスト』の編集長を務める。2017年に独立。現在はフリーのライター/編集者。
 
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