ヒナタカの雑食系映画論 第39回

『葬送のフリーレン』金曜ロードショーの視聴率6.8%は大健闘? 地上波放送で「時の流れ」を描いた意義

テレビアニメ『葬送のフリーレン』(日本テレビ系)が金曜ロードショーで初回2時間スペシャルとして放送され、今後は毎週金曜よりレギュラー放送となります。「一挙放送」された意義を振り返りつつ、「あっという間」の時の流れの中を体感させる本作の魅力をひもといてみます。(サムネイル画像出典:『葬送のフリーレン』公式サイトより)

9月29日に、テレビアニメ『葬送のフリーレン』(日本テレビ系)が金曜ロードショーで初回2時間スペシャルとして放送され、平均視聴率は世帯6.8%、個人4.2%を記録しました。10月6日より毎週金曜夜23時からのレギュラー放送となります。
葬送のフリーレン
『葬送のフリーレン』公式サイトより

視聴率は6.8%は十分な数字?

金曜ロードショーで放送されるスタジオジブリ作品や劇場版『名探偵コナン』が、近年でも10%に迫る(また超える)視聴率を記録していることを鑑みると、『葬送のフリーレン』の6.8%はやや低い数字に思えるかもしれませんが、個人的には大健闘していると思います。

例えば、国内だけで137.5億円の興行収入を記録した『劇場版 呪術廻戦 0』でもMBS・TBS系で地上波初放送された時の(世帯)視聴率は4.3%。絶賛に次ぐ絶賛が寄せられた『劇場版 ヴァイオレット・エヴァーガーデン』 が金曜ロードショーで初放送された時でも視聴率は5.1%でした。今回の『葬送のフリーレン』はテレビアニメの初回一挙放送であり、劇場公開済みのアニメ映画との単純な比較はできませんが、やはり十分な数字に思えるのです。
 

そして、『葬送のフリーレン』の原作漫画は累計発行部数が1000万部を超える大ヒット作。だからこその今回の初回一挙放送の話題性および視聴率があったともいえます。そして、『鬼滅の刃』『チェンソーマン』『推しの子』『SPY×FAMILY』のように、もともとの原作漫画の人気に加えて、超ハイクオリティなアニメ化により、さらなる社会現象的なコンテンツへとなっていくかはまだまだ「これから」。今後の盛り上がりにも期待できます。

“その後”の物語をしみじみと楽しめる作風

視聴率よりも重要なのは、この『葬送のフリーレン』は「テレビアニメの初回を金曜ロードショーで一挙2時間放送」という異例の取り組みにより、作品の魅力をはっきりと伝えることに大きな意義があったと思えることでした。その理由の筆頭は「長い時の流れ」が「あっという間に過ぎる」ことを感じさせる作品であることです。

あらすじを紹介しておきましょう。主人公であるフリーレンは1000年以上の長い時を生きるエルフであり、第1話で彼女は50年の時を経て、かつての仲間である勇者ヒンメルと再会します。フリーレンは若い姿のままですが、一方でヒンメルは年老いており、そしてこの世を去ります。その葬式で、共に過ごした10年の冒険を思い出したフリーレンは「人間の寿命は短いって分かっていたのに、なんでもっと知ろうとしなかったんだろう」と後悔し、その10年の冒険の足跡をたどりつつも、あてのない旅に出ることになります。

まず、キャッチーかつ変わっているのは「魔王を倒した勇者一行の“その後”」の物語だということ。そのこともあって静かに展開する穏やかなエピソードが多く、派手なアクションは主軸にはなっていない、主人公が熱血だったり強い意志を持っているわけでもない、悪い言い方をすれば地味な作風なのですが、「こういうのもいいなあ……」と、既存の大ヒット作とはまったく異なる、しみじみと楽しめる内容こそが支持を得ているのだと思えたのです。



>次のページ:「倍速視聴」できないことも、フリーレンの「時の流れ」を体感する要因に
 

Lineで送る Facebookでシェア
はてなブックマークに追加

連載バックナンバー

Pick up

注目の連載

  • ヒナタカの雑食系映画論

    映画『デデデデ』が大傑作になった5つの理由。『前章』『後章』の構成の意義と、現実に投げかける希望

  • ここがヘンだよ、ニッポン企業

    親を就活に巻き込むオヤカク、オヤオリ…“学校化”が進む企業に忍び寄る「毒ハラ」とは?

  • 「港区女子」というビジネスキャリア

    「港区女子=事業資金集め」という選択肢。昼は不動産営業、夜は港区ラウンジ嬢だった30代女性の現在

  • 世界を知れば日本が見える

    もはや「素晴らしいニッポン」は建前か。インバウンド急拡大の今、外国人に聞いた「日本の嫌いなところ」