ヒナタカの雑食系映画論 第38回

この秋は「ナメてた相手が実は殺人マシンでした映画」が大充実! 残酷描写があっても大人気の理由とは

「ナメてた相手が実は殺人マシンでした映画」というジャンルをご存じでしょうか。実はこの2023年秋、劇場公開されているその手の映画が大充実しているのです。一挙に4作品紹介しましょう。(C)2022 UNIVERSAL STUDIOS

ほかにも殺人マシン映画の名作が盛りだくさん!

ほかにも、「ナメてた相手が実は殺人マシンでした映画」は数多く作られています。箇条書きで紹介しましょう。

『ランボー』:ベトナム戦争の帰還兵が追撃され続ける、良い意味でスカッと爽やかとならない悲しい物語
『96時間』:病的なまでに子離れできていないお父さんが娘を助けるために大奮闘
『アジョシ』:組織にさらわれた女の子を助けに行く&主演のウォンビンがとにかくかっこいい!
『ヒストリー・オブ・バイオレンス』:平凡なダイナーの店員が予想外の戦闘スキルを発揮しマスコミに注目される
『ザ・コンサルタント』:主人公は表向きは年収1000万ドルの会計士ながら高機能自閉症を抱えている
『ドント・ブリーズ』:3人の泥棒と盲目の男が1軒家でバトルを繰り広げる
『マンディ 地獄のロード・ウォリアー』:悪夢のような世界観と演出のため上級者向け
『ザ・フォーリナー 復讐者』:ジャッキー・チェンが笑顔を封印&テロリズムの本質を突く社会派の面もある
『ライリー・ノース 復讐の女神』:5年間の訓練と準備期間を経て、麻薬カルテル相手でも怯まない強いママが誕生!
『スノー・ロワイヤル』:勘違いがさらに勘違いを生んでさらにヒドいことになっていくバトルが勃発
『ベイビーわるきゅーれ』:殺し屋の女の子2人のグダグダな日常を描きながらも本格アクションが繰り出される日本映画
『キャッシュトラック』:現金輸送車の警備員の新人が高すぎる戦闘スキルを持っていて大助かり&その後は意外な展開に
『Mr.ノーバディ』:平凡なパパが殺人マシンに&後半の展開に大笑いできる

ひと口に「ナメてた相手が実は殺人マシンでした映画」といっても、イケメンやパパやママなど主人公像はバラエティ豊かで、作品の方向性も多種多様であることがお分かりいただけるでしょうか。

実は、みんなを幸せにする映画

なぜ「ナメてた相手が実は殺人マシンでした映画」は多くの人を惹きつけ、そして作られるのか。その理由はひとえに、現実でためているストレスをフィクションの暴力で解消してくれることが大きな理由でしょう。

誰しも多かれ少なかれ、ふんぞりかえっていたり、調子に乗っていたり、はたまた悪事を繰り返しているのにおとがめがなかったりする誰かにイライラすることはあるでしょう。そんなやつらが、殺人マシンだと知らない相手をナメきっていて、その結果としてけちょんけちょんにされるって、それはもう痛快愉快なのはいうまでもありません。

もちろん、現実では暴力ダメ、絶対。前述したように「ナメてた相手が実は殺人マシンでした映画」には不謹慎な笑いもそれぞれにあるのですが、それも創作物である映画だから気兼ねなく笑えるというもの。映画はやはりまっとうな倫理観のある日常から離れ、現実ではまったく正しくないことを受け取ることも、大きな意義。同時に、R15+指定されるほどの残酷描写も、その暴力の恐ろしさを思い知るために重要だと思うのです。

さらに、「ナメてた相手が実は殺人マシンでした映画」はシンプルな面白さが分かりきっているがゆえに、一定の面白さはほぼほぼ証明済みであるし、俳優それぞれの演技力・アクションの技術もストレートに分かるジャンルでもあると思うのです。『ジョン・ウィック』のキアヌ・リーブスの生真面目さやアクションの技術、『イコライザー』のデンゼル・ワシントンの(劇中では裏で殺人をしているのに)良い人ぶりはその代表でしょう。

そのように考えると、スカッと爽やかかつ、分かりやすい面白さに満ち満ちた「ナメてた相手が実は殺人マシンでした映画」は、みんなを幸せにする、なんとすてきなジャンルなのかと改めて思うのです。ぜひ、何かイヤなことがあったりストレスがたまった時こそ、見てみてほしいです。


この記事の筆者:ヒナタカ プロフィール
All About 映画ガイド。雑食系映画ライターとして「ねとらぼ」「CINEMAS+」「女子SPA!」など複数のメディアで執筆中。作品の魅力だけでなく、映画興行全体の傾向や宣伝手法の分析など、多角的な視点から映画について考察する。2022年「All About Red Ball Award」のNEWS部門を受賞。


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