コロナ禍があったから変えられた
それにしても、よくここまで変えられたものです。コツはなんだったのでしょうか。「変えることに反対の人たちが言うのは、『今までやってきたことは何だったんだ』ということなんです。やっぱり、自分たちがやってきたことを正しかったと言いたい気持ちが、根幹にあるんだろうなと思います。
でもそれをずっと言っていても仕方がないので、『みんなの意見を聞こう』ということで、アンケートをとりました。そうしたら、自然と現在の形に至った感じです」
コロナ禍だったことも影響したでしょうか?
「それ(コロナ禍)がないとダメだったと思います。いろいろな活動が止まっているから、変化できた。活動しながらでは誰も改革なんてやってくれないと思って、それで僕もすごくスピーディに動いたので。あとは、改革をやった3年間タッグを組んでいた校長先生が、すごく理解のある先生だったことも大きかったと思います」
さらに聞くと、実は山口さん、以前も近い経験をしていたようです。会社員時代にも、古い仕組みを一新したことがあり、「そのときと全く同じような状況と人の感情があったので、おそらく同じようにやればいけるんじゃないかと思った」のだそう。
PTA改革中は、周囲からいろいろ言われることもありましたが、「今いっしょに活動しているのはみんな自発的にやってくださっている人たちなので、すごくポジティブだし企画もいろいろ出てくるので、改革をやって非常によかったです」と振り返ります。
「何となく大変そう」というイメージを変えたい
今後やりたいことも、いくつかあるといいます。1つは市P連について。先ほども触れたように「連絡協議以外の活動」が多く、会長や役員さんたちの負担があるため、改善する方向に後押しできたらと山口さんは考えています。
また、千葉県ではよく自治体(市)が各PTAに「補導員」(委嘱)の人数を割り当てており、PTAが強制を止められない一因になっています。そこで山口さんは、この仕組みをアップデートするよう求めているとのこと。
今後はもうちょっと会員が増えるよう、自校PTAのイメージを変えることも検討中だそう。これまで山口さんが作成してきた文書はかた苦しく、「なんとなく大変そうと思って様子を見ている人が多い」と聞いたからです。今、臨時会員の人たちにお願いして、やわらかい文書をつくってもらっているといいます。
取材の終わりに、私が「おつかれさまです!」と声をかけると、「まだまだ、まっただなかですけれど」と山口さん。
そうですよね。これからもいろいろありそうですが、どうかいい方向に進みますよう。
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この記事の執筆者:大塚 玲子 プロフィール
ノンフィクションライター。主なテーマは「PTAなど保護者と学校の関係」と「いろんな形の家族」。著書は『さよなら、理不尽PTA!』『ルポ 定形外家族』『PTAをけっこうラクにたのしくする本』『オトナ婚です、わたしたち』ほか。ひとり親。定形外かぞく(家族のダイバーシティ)代表。