どうする学校?どうなの保護者? 第7回

PTAの進化系か、原点か? 「加入率2%」「会員5名」になってもPTAを続ける理由

ここ数年、自動強制加入をやめ、任意で加入する形に改めるPTAが増えていますが、それでも半数以上の世帯が加入するケースがほとんどです。そんななか「会員数5名(加入率2%)」のPTAを発見! なぜ、このような形に至ったのでしょうか?

【連載:どうする学校? どうなの保護者?ーVol.7ー】
なぜPTAを続けるのか
「加入率2%」でもP連に参加するPTA会長の思いとは?
PTAの運営にかかわりたい人は“常任会員”、スポットで協力したい人は“臨時会員”を選んで入会を申し込む。今年度の会員は、PTA会長と校長を含めて全5名――。これは千葉県柏市にある大津ケ丘第二小学校PTAの加入状況です。

ここ数年、自動強制加入をやめ、本人の意思で加入する形を整えるPTAが各地で増えてきました。ただし、加入率が5割を切るケースはあまり聞きませんし、他方では解散・廃止を選択するPTAもちらほら出てきています。

「なくさなくても、おやじの会くらいの少人数で継続するPTAがあってもいいのでは?」と思っていましたが、なかなかそういった例は見かけませんでした。

でもついにありました、少人数PTAの発見です。どうやっていまの形になったのか? 問題は起きていないのか? 今後の課題は?

早速、PTA会長の山口晃一郎さんにお話を聞かせてもらいました。

「PTAを本来の姿に戻したい」

2022年度から任意加入の仕組みに改めて、現在2年目。会員5名のうち、会長の山口さんと校長先生を除いた3名は「臨時会員」です。小学校全体の家庭数は約250なので、保護者の加入率は2%弱ということになります。

少人数なので、2023年度の活動は「体操服リサイクル活動」のみ。着なくなった体操服の回収や保管、ラベリング、希望者への対応といった作業を行うだけなので、今の人数にちょうどいいといいます。

山口さんはコミュニティ・スクール(CS/学校運営協議会)の委員にもなっているので、「今後、学校まわりで手が必要なことは、PTAでなく地域学校協働活動の枠組みでやっていけるのでは」と考え、その方向で動いているそう。

会費も、昨年度からナシにしました。連絡や会議はLINEで行うことにしたので、印刷関連の費用は不要です。その他の支出も1つ1つ、なくせることを確認しました。以前は最も多く予算を充てていた児童のクラブ活動費についても、これからはカンパや行政の補助金などでまかなっていく方針です。

「“予算”という考え方をなくしたかったんです。たぶん、それがあるからPTAは柔軟に変化できないんだろうな、と思ったので」と、山口さん。

市P連(市のPTA連合会)には、ちょっとイレギュラーな形で参加しています。会長の山口さんと校長先生の2人だけが、個人で会費をおさめているのだとか。「市P連には残りたかったので、どうすればいいか考えて、この形でなんとか了承を取り付けた」といいます。

PTAの団体保険(活動保険)には、昨年度から入っていません。会員には「自分の保険を使ってください」と伝えているそう。

最近はPTA改革を行う際に、名称を変えたり、P連を抜けたりする例も増えています。そんななか、なぜ名称も変えず、P連にも残ることを選んだのでしょうか。

「PTA自体を否定するのでなく、本来あるべき姿に戻すべきだ、というのが僕の考え方なので。僕は『親の横のつながり』が大事だと思うし、本来やらなきゃならないのはそこだと思っています。でもP連は『連絡協議会』なのに連絡協議以外のことをやり過ぎている。だからP連でも『本質に立ちかえろう』と提案しているところです」(山口さん)

「価値観の押し付け」に問題があるのでは

いったん時間をさかのぼりましょう。山口さんがPTAにかかわり始めたのは、今から4年前でした。

上の子が小学校に入ったとき、「妻が浮かない表情をしていた」ので理由をたずねたところ、原因がまさにPTAだったのです。当時は加入も活動も強制だったので、山口さんの妻は「子ども3人分の“ノルマ”をこなさねば」と思い悩んでいたのでした。

そこで山口さんがPTAのことを調べてみると、「これはちょっとおかしいのでは」と思うことが多々あったため、中に入って改めることに。するとおそらく「男性で珍しかった」ため、最初から副会長をやることになったのでした。

「入ってみたら、やっぱり全国的な問題になっているような状況がそのままありました。1個ずつひも解いていったら、おそらく『価値観、正義感の押し付け』に問題があるんだな、と思ったんです。皆さん良い人ばかりなんだけれど、『これは大事なことだから、みんなにやってもらおう』というふうに、その人の価値観を押し付けてしまっている。

でも、物事の価値観や優先順位は家庭によって違うわけだから、それは尊重して、強制のない形でやっていきましょう、っていうのが(改革の)発端だったんです」

会長1年目だった2021年度は、まずポイント制を廃止しました。最初に保護者全体にアンケートを行い、賛成・反対・その他の意見を全て公開。そのうえで再度アンケートを行ったところ、1度目よりは減ったものの、10名ほど反対の人がいました。

そこで個別に話をしようと山口さんが声をかけたところ、みんな「それほどの問題ではない」と答え、ポイント制廃止に同意してくれたということです。

翌2022年度からは加入方法を任意に改め、会費の徴収もナシに。PTAバレーボール部は同好会として別団体に移行し、現在に至ります。

いろいろと変えた結果、何か問題は起きていますか? と尋ねると、「あるとしたら外からの圧力のみで、それ以外は全く問題ないです」ということでした。


>次ページ:PTA改革、成功の要因は?
 
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