3位:ナミとカヤの「本当の気持ち」がシンクロする会話
屋敷に住むお嬢様のカヤは、“泥棒”でもあったナミにこう語りかけています。「1人でたくさん(豪華な装飾品を)持っていても意味がないって言いたかっただけ。できれば分けてあげたいわ。困っている人や、家族や、友達に」と。後に明かされるナミの過去で、彼女は表向きにはアーロン海賊団に入り泥棒を続けていたものの、それが実際は村を買い戻すためだったことが判明します。つまり、この時のナミとカヤは「本当の気持ち」がリンクしており、2人とも「物質的な豊かさなど求めていない。自分のためではなく、他の誰かの幸せのために行動したいと願う性格」だったことが分かるのです。 また、カヤが「みんな壊れ物みたいに扱うの。同情はいらない」と言うと、ナミは「じゃあ同情しない」とだけ答えました。こちらも、共に姉妹として育ったノジコを含み、周りを欺いてまで“悪役”となり、村のためにただお金を貯め続けた、ナミの「同情なんていらない」境遇とシンクロしています。
さらにカヤは、両親を海の事故で亡くしてしまったこと、その遺品の整理をせず部屋に閉じ込めたままだと告げ、「大切な人を亡くしたことがある?」とも聞いて、ナミは「ない」とだけ答えました。
もちろん、ナミは育ての親のベルメールを亡くしているので、ウソをついています。しかし、これは「両親の死に向き合えずにいたまま」であるカヤの心情に対して、ナミは親の仇であるはずのアーロンの海賊団に入ったこともあって「母親の死を乗り越えている」と自信を持っている、だからこそ、ついウソをついてしまったようにも思えたのです。 ここでちょっと険悪なムードも漂いましたが、その後のカヤとナミが「羨ましいわね」「お金持ちがよく言う」「あなた友達付き合い下手だよね」「下手くそかもね」と言い合いつつ笑う様がほほ笑ましく、2人が本当の友達に一時的にでもなれたような尊さを感じました。
2位:コビーが「もう1人の主人公」のような立場に
今回の実写ドラマでは、海軍将校となったコビーが「もう1人の主人公」といっても良いほどの役回りになっています。海賊を捕えようとする新米としての立場と、ルフィと友達となった立場の間で葛藤しながらも、麦わら海賊団を追うことになるのですから。さらに海軍中将である老人ガープの立場もまた、そのコビーの葛藤に深く関わっています。ガープはルフィの祖父であり、複雑な思いを抱えつつ孫を捕まえようとしています。その矛盾を、同様にルフィに対する2つの価値観で揺れているコビーにまで押し付けているような、独善的な性格が見て取れるのです。
さらに、恐怖で街を支配していた手斧のモーガンの息子・ヘルメッポと、コビーの関係も新たに描かれています。ヘルメッポが親から虐待、またはネグレクトを受けているように思えたことは、祖父から追われ続けるルフィの立場にもどこか通じているように思えましたし、コビーとヘルメッポもまた友情を育んでいけるような尊さを感じました。 さらにシビれたのは、第3話のラストでコビーがウソップにかける言葉。こればかりは実際に見てほしいので、ここでは触れません。葛藤を抱えつつも、ただただ目の前の問題に対して誠実であろうとした、コビーの誠実さがこれ以上なく伝わったのですから。
1位:ゾロとナミがお酒を飲み交わすゲームで告げた言葉の尊さ
第5話で、ゾロとナミは「言い当てられなかったらお酒を1杯飲む」ゲームをします。ゾロは「俺はけっこうお前を知っている」と言い、ナミは「いや、そっちこそ分かりやすいから」と返し、2人とも初めは互いを小馬鹿にした言い方をしていました。ゾロの「俺の読みじゃ都会育ち。悪さをして、こういうバーに入り浸っている」という予想はもちろんハズレ。ナミはここで「田舎のみかん畑のある場所で育った」と(前述したカヤについたようなウソではない)本当のことを言いました。
さらに、ナミの「子どもの頃、友達いなかったでしょ」という質問に対してのゾロの答えは「1人だけいた」で、ナミは「私よりも1人多い」と返しました。言うまでもなく、ゾロのたった1人の友達・くいなは事故で亡くなっています。さらに、ナミは親の仇であるアーロンの海賊団の一員として生きていたので、本当に分かり合える友達など、ずっとできるはずがなかったのです。
そんな2人の哀しさが垣間見えたところで、ゾロはただ「飲もう」と言います。そう提案したのは、ここで2人がわずかに、でも、確実に分かり合うことができたからだと思えたのです。
これらの改変ポイントベスト5のほかにも、注目すべき点はまだまだあります。ぜひ楽しんでみてください。
この記事の筆者:ヒナタカ プロフィール
All About 映画ガイド。雑食系映画ライターとして「日刊サイゾー」「ねとらぼ」「CINEMAS+」「女子SPA!」など複数のメディアで執筆中。作品の魅力だけでなく、映画興行全体の傾向や宣伝手法の分析など、多角的な視点から映画について考察する。2022年「All About Red Ball Award」のNEWS部門を受賞。
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