約50年前からあった“うわさ”
実は、別班という危険な機関があるといううさわは、50年近く昔から1人歩きしてきた。最初のきっかけは、1976年に発生した韓国の金大中氏(後に大統領)が韓国の反政府分子であるとして日本で韓国スパイらに拉致された事件だった。その件に、別班が協力していたのではないかと取り沙汰されたのである。
さらに1978年には、日本共産党の赤旗が『影の軍隊』という書籍を出版。サブタイトルには、「『日本の黒幕』自衛隊秘密グループの巻」と書かれ、表紙には、アメリカの対外諜報機関であるCIA(中央情報局)をもじって、「JCIA」と書かれている。そこでも別班の暗躍が描かれているが、当時から実名で発言する元「別班員」らから、内容が飛躍し過ぎていると指摘されてきた。
別班の実態は
ここまでの話をまとめると、別班は過去に存在し、昔から怪しい隠密組織として語られてきたが、その実は国内でソ連や中国などの情報を集めていただけに過ぎない。ただ関係者の中には、自衛隊関係者として、在外公館(大使館など)で防衛駐在官として勤務する際に受け入れ国の軍関係者などと話をしながら情報交換する人もいなくはなかったため、そうした話が飛躍している可能性はある。
そもそも日本には、外国で活動するCIAやMI6(アメリカ秘密情報部)のように組織立った対外諜報機関が存在しない。それでも外国の情報は欲しいために、自衛隊や警察などから在外公館の警備担当者や防衛駐在官として派遣された場合に、個々の裁量で情報収集をする人もいる。
個人が勝手にそういう活動をして捕まった場合には、ひどい扱いを受けることもあるだろうし、命が危険にさらされるような状況に置かれる可能性はある。公式に助けてくれる機関もない。
自衛隊など軍事組織のメンバーが肩書きを隠して外国で秘密裏に活動、ということなら国際的にもスパイ活動に当たり、他国では非常に危険な工作となる。国によっては犯罪行為に当たり、そんな活動を自衛隊や防衛省、日本政府が許すとは思えない。
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