自称・元「別班員」たちの存在
さらにもう1つ、別班の姿を見えにくくしているのが、最近の別班を扱ったいろいろな記事に、「私は別班にいた」という人たちやそういう人たちの発言が次々と登場することだ。公式には存在していないはずなのに、なぜか、極秘任務で活動していたという元「別班員」たちが、そこら中にいるのである。
もっとも、重要なのは、匿名で記事などで紹介されている自称「別班員」が本当に別班らしき組織にいたのかは誰にも証明できないことだ。全ては極秘だからだ。
別班は確かに存在していた
そこで筆者も、関係者などに話を聞いてみた。それを総合すると、別班は確かに存在していた。
別班と呼ばれる組織は、1954年に設立された陸上自衛隊幕僚監部第二部という組織の中に確かに存在していた。当時の別班は、正式には「特別勤務班」で「ムサシ機関」と呼ばれることもあった。アメリカ陸軍とも協力しながら、国内で情報共有は行っていた。
ただ、あくまで活動は国内に限られていたようだ。そもそも、日本の組織はどれも、海外で諜報活動(隠密な情報活動)をできる法的な根拠(権限)を持たないので、戦後にそうした活動を組織的に行ってきたことはないし、できなかった。
つまり、『VIVANT』で描かれるような危険な「別班」という組織は存在してはいけないし、海外に出て行ってひそかに超法規的な工作活動をするようなこともあり得ない。
これまで元「別班員」だったと名乗り出ている人の中には、実名を明らかにして暴露する書籍を出版した人もいるし、インタビューなどに応じた人もいる。名前を出した別班にいた人たちの多くは、別班というのは日本国内で情報を扱う仕事をしているだけであって、海外に出て行って隠密工作をするような大した組織ではないと証言している。
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