いま日本で最も話題のテレビドラマといえば、日曜劇場の『VIVANT』(TBS系)だろう。言うまでもないが、このドラマはフィクションであり、ドラマの最後には、ほかのテレビドラマと同様に「このドラマはフィクションです。登場する国家、団体、人物、名称等は実在するものとは関係ありません」との言葉が映し出される。
ところが、このドラマが始まってから、ドラマに登場する自衛隊の「別班」という組織が話題になっている。
自衛隊の「別班」は本当に存在するのか?
インターネットで「別班」と検索すると、数多くのメディアが別班について「本当に存在するのか?」といった記事を掲載していることが分かる。しかも大手メディアなどの記事を読めば読むほど、別班が存在するかどうか分からなくなり、その「姿」はよくつかめないのではないだろうか。
実は、世界のスパイたちを取材してきた筆者も、「ドラマに別班という危ない組織が出てきますが、あれって実在するのですか」と聞かれることもある。それほど注目度が高いということなので、今回はそもそも「別班」という組織の「実態」について探ってみたいと思う。
日本政府は別班の存在をキッパリ否定
まず別班を語る上で最初に知るべきことは、日本政府が別班という組織は存在していないとキッパリと否定していることだ。
2013年には、当時の小野寺五典元防衛相が、共同通信が「別班」の存在について書いた記事に対して、記者団にこうコメントしている。
「陸上幕僚長に過去と今、そのような機関があるか確認したが、ないという話があった」「陸幕運用支援・情報部長等にも陸幕長を通じて確認したが、『そのような組織は自衛隊に存在していない。現在もない』という報告だった」(『読売新聞』2023年9月8日付)
さらにこの件は当時国会でも取り上げられ、政府は「『陸上幕僚監部運用支援・情報部別班』(筆者注:別班のこと)なる組織については、防衛大臣が、御指摘の答弁を行う前に、陸上幕僚長から口頭で報告を受け、さらに、御指摘の答弁の後にも、陸上幕僚長に陸上幕僚監部運用支援・情報部長等への聞き取りを行わせてその内容を口頭で報告させたところ、これまで自衛隊に存在したことはなく、現在も存在していないことが確認されており、現時点においてこれ以上の調査を行うことは考えていない」との見解を明らかにしている。
そのほかにも、これまで政府高官らが別班の存在を否定するような発言を繰り返してきた。
ここまで否定されたら「存在しない」ということでいいのではないかとも思うが、一方で、工作活動などをする人は隠密活動をするというイメージがあるために、政府や自衛隊が別班の存在を隠しているのではないか、ということを言い出す人が出てくる。世の中には、ありえないような陰謀論を信じている人もいるので、そう考える人がいても不思議ではない。
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